人間関係とお金の“正しい距離”
世の中には、古い家に住み、安い服を着て、軽自動車に乗り、一見すると「質素な生活」を送っていながら、実際には大きな資産を持っている人は珍しくありません。なかには山本さんのように、人間関係のトラブルが原因でそうなってしまった人もいるでしょう。
今回、せっかく人生を豊かにする資産を持ちながら孤独な人生を送ることになってしまった山本さんやご両親に欠けていたものは、 「自律性(自分軸)」です。
お金は人生を豊かにするための道具であり、それ自体が目的ではありません。自分が望む生活を送るために必要な金額以外は、自由に使いたいことに使えばいいのです。しかし、他者との関係においては明確な線引きが必要です。
「泣きつかれたから貸す」「頼まれたから貸す」という受動的な姿勢は、トラブルのもとでしょう。「たとえ裏切られたとしても、その人のためにお金を出してあげたいか」という能動的な観点でお金を出す。そうすれば、仮に裏切られても人間不信にならず、「高い勉強代だった」と、経験値として処理し、その後の人生に活かすこともできます。
それを判断するためには、返ってこなくても自分の生活に影響がない金額を知っておくことが不可欠です。ライフプランを考え、家計の将来予想を立て、「自由に使えるお金」と「守るべきお金」を明確にしておく必要がありますね。
また、元妻の浪費についても、夫婦で「これからどうお金を使っていきたいか」を話し合い、ルールを決めて管理できていれば、悲劇は回避できたかもしれません。
真の豊かさとは
日銀資金循環統計によると、2024年12月末時点での家計の金融資産残高は2,230兆円にもなり、純金融資産1億円以上の富裕層世帯は増加傾向にあります。
お金はあればあるほどいいものではありますが、「どう使うか」の軸がなければ満足度の高い人生を手に入れることはできません。
生きていれば人の裏切りにも遭うこともあれば、予期せぬことで大きなお金を失うこともあるでしょう。しかし、自分の軸を持ち、仮に人に裏切られても投資の損切りのように「仕方がない」と割り切り執着しないこと。自分の幸せのために気持ちよくお金を使える状態を作っておくことこそが、真の豊かさといえるのではないでしょうか。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
