◆桜の撮影中に横から割り込んできて…

「公園の奥にある小さな池の周りに桜が咲き誇っていて、池に映る桜の美しさに感動した私たちは、写真を撮ろうとしていました」
人があまり映らない絶好のアングルを見つけ、カメラを構えた瞬間だった。突然、目の前に割り込んできたのは、金髪で派手な服装をした外国人観光客の若いグループだった。
「彼らは『オー、ビューティフル!』『パーフェクト!』などと大声で叫びながら、まるで私たちが存在しないかのように次々とポーズを取り始めました」
黒渕さんは丁寧に「すみません、写真を撮っているので」と声をかけたが、彼らは全く聞く耳を持たなかった。
「私も段々と腹が立ってきて、『エクスキューズミー! ウィーアーテイキングピクチャーヒア!』とカタコトの英語で注意したのですが、彼らは『オーケー、オーケー』と適当に返事をするだけで、相変わらず自撮りに夢中でした」
我慢の限界がきた黒渕さんは、大きな声で「邪魔です!どいてください!」とジェスチャーも交えて強く訴えた。しかし、彼らはそれすらも面白がり、より大げさなポーズを取ってはしゃいでいたという。
◆背中から池にドボン
グループの中でも特にはしゃいでいた金髪の男性が、池の縁の石に足を乗せて決めポーズを取ろうとした。その瞬間である。予想外の出来事が起きた。「その石が濡れていたのか、足を滑らせてバランスを崩し、そのまま背中から池にドボンと落ちてしまったのです」
水しぶきが上がり、周囲からは「オーマイガッド!」という声が上がった。落ちた男性は慌てて立ち上がったが、おしゃれに着飾っていた白いシャツとジーンズはびしょ濡れ。さらに、高そうな一眼レフカメラも完全に水没してしまったという。外国人観光客は濡れた服装のまま、慌ててその場を去っていった。
「彼女は心配そうな顔をしていましたが、私は正直なところ、少しすっきりした気持ちでした。あまりにも身勝手な行動に対する報いのようでした」
——外国人観光客が、文化や風習の違う土地を訪れてテンションが上がってしまうのはわかる。お互いが気持ちよく過ごせるように早くなってほしいものだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

