◆「品行方正な障害者」でいることが窮屈だった

龍牙:それこそ、幼稚園くらいのときは歌手になるだろうなと思っていました。学生時代にはテレビCMに出演させてもらったり、さまざまな活動をしてきました。それぞれ良い体験だったのですが、世の中が“清らかな障害者”を求めすぎていることはずっと感じていました。ある時期には「障害者の希望の星」みたいな扱いをされて、品行方正な障害者という枠組みにいることが窮屈だったんですよね。障害があってもいろいろなことに挑戦していいし、ときには悪態をついてもいいと僕は思うんです。
一方で、僕は昔から、いじめられている子を公然と守って、今度は自分がいじめの標的になることがままありました。僕の根っこにはやっぱり正義感がある。だから、ダークヒーローがちょうどいいのかなと思っているんですけど。
――これからの展望を聞かせてください。
龍牙:障害があることを理由に、人前で何かをすることをためらっている人は少なくないと思います。けれども、障害者も健常者も関係なく、自分がやりたい表現をすればいいというのが僕の意見です。僕のステージをみて、「こいつがここまでできるなら、自分もやってやるか」って気概を持った人が現れるのも面白い。僕をみてもわかるように、障害があるから清廉潔白って時代でもないし、多様な人がいていいはず。フラットにひとりの人間として、少しでも多くの人たちの心に影響を与えられるステージをこれからも作っていけたらいいなと思っています。
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人と異なる姿形で生まれれば、その人格にさえ影響を及ぼしかねない。残酷なことに、どれほど平等や公平が声高に叫ばれても、水面下での差別意識を根絶することは極めて難しいからだ。龍牙さんが届けるエンターテイメントは型破りだ。既成概念も旧態依然の常識も、あっという間に打破する存在感を放つ。
いくつになっても負けることが嫌い。龍牙さんはきっといつまでも、そんな剥き出しの心意気で、日本のエンターテイメントの歴史的な起爆剤であり続ける。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

