『RAMEN LILY』(長野市)
塩らぁ麺続いてご紹介するのは、2025年1月30日にオープンした『RAMEN LILY』。
店の場所は、長野市の中心市街地・権堂。権堂は、かつては市内随一の歓楽街として名を馳せていたが、近年、観光インフラや若年向けショップが続々と建設・開設され、新世代に対する誘引力が急伸している注目エリア。ラーメン店に関しても、市内屈指の激戦区としての地位を確たるものとしつつある。
『RAMEN LILY』は、そんな権堂エリアの一角に店舗を構える。最寄り駅は、権堂駅(長野電鉄長野線)。同駅から約200mという立地は、同エリアに所在するラーメン店の中でも至便な部類だ。
同店を切り盛りするのは、河島店主。長野市内の実力店で修業し、この度、満を持して一国一城の主となった新進気鋭。
店名と同様、モダンな雰囲気の外観提供する麺メニューは、「塩らぁ麺」、「塩つけ麺」、「醤油らぁ麺」など。うち、「醤油らぁ麺」は平日のみの提供だが、初めての訪問であれば、券売機筆頭メニューである「塩らぁ麺」を注文すれば、間違いないだろう。
出汁を構成する素材は、豚骨、香味野菜、鯖節、2種類の鰹、羅臼昆布等であるが、特に、舌上から喉元への移ろいさえ知覚できるほど分厚く明瞭な羅臼昆布の滋味には、数多くの「塩」を食してきた私も驚嘆せざるを得なかった。
ゲランドの塩に白醤油、純米酒を合わせた塩ダレも秀逸。立ち上る香気からは、そこはかとない色気が漂い、流星のごとく長く尾を引く余韻は、ふくよかさを演出する素材の乗算のたまものだ。
中盤以降、次第に頭をもたげる豚骨のコクも、味わいに奥行きを与え、滑らかな平打ち麺にしっくりと馴染む。
トッピングに香ばしく焼いたセミドライトマトをあしらい、「洋」の趣をさりげなく添えるギミックも、「分かる」食べ手には刺さるに違いない。塩ラーメンの優良店が比較的少ない長野のラーメンシーンにおいては、貴重な「塩」の名品。権堂へと足を運ばれた際には、この1杯を見逃す手はない。
●SHOP INFO
RAMEN LILY
長野県長野市鶴賀緑町2212−21 日之出ビル1F
営:11:00〜14:30、17:00〜20:00
※日曜、祝は昼のみ営業
休:月
『中華そば三昧軒』(上田市)
中華そば締めを飾るのは、2024年11月8日にオープンした『中華そば三昧軒』。店舗のロケーションは、上田駅(JR東日本・しなの鉄道・上田電鉄別所線)から約500m。
同店は、長野県を中心に複数のラーメン店を展開する『凌駕グループ』の系列店。人気店『らあめんひばりや』を引き継ぐ形で営業を開始。営業時間中は、常に満員御礼状態をキープし続ける、東信の注目店だ。
提供するのは、「中華そば」と「つけそば」の2種類。特に「中華そば」は750円と、上田の地においても異例の低価格。そして、同メニュー(「中華そば」)は、長野が誇る天才ラーメン職人・赤羽氏が長年の研究の末に商品化に漕ぎ着けた“ちゃん系”インスパイアだ。
“ちゃん系”とは、現在、一都三県を席巻している、クラシックとモダンを絶妙に調和させたノスタルジック中華そば。赤羽氏は、その“ちゃん系”の味をベースに長野県民の嗜好に合うよう調整を重ね、『三昧軒』の「中華そば」を完成させた。まさに、スープ、麺からトッピングに至るまで、天才の創意が余白なく盛り込まれた最強の1杯だ。
賑やかな雰囲気の玄関「つけそば」の完成度も極めて高いが、イチ押しは、やはり「中華そば」。
口を付ける前から宙を舞うスープの香気が「燎原の風」のごとく鼻腔にそよぎ、否応なく食欲を掻き立てる。
レンゲを丼へと滑らせれば、豚骨の重厚なコクと滋味が、舌上でふわりと重なり合い、波紋の如く口内全体へと拡散。
このスープに合わせるストレート麺はモッチリと歯を押し返すような弾力を有し、すする度に食べ手に確かな手応えをもたらす。「チャーシューメン」を頼まずとも約10枚のチャーシューが搭載される点も、特筆に値する。
すすりを重ねるにつれて、右肩上がりに深まりゆく余韻。追加トッピングで購入した「スライス茹でたまご」を箸休めとして摘まみながら、海のように広がるスープの滋味に身を委ねている内に、気が付けば丼を空けてしまっていた。
空っぽの丼を前に、胸の奥から抗いがたき歓喜がこみ上げた。上田のラーメン食べ歩きにおいて、同店を積み残すのは痛恨の極みだろう。万難を排して狙いに行くべき必食の1杯だ。
●SHOP INFO
中華そば 三昧軒
住:長野県上田市大手1-10-5
営:10:00〜15:30、17:30〜21:00
休:無休
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。
