
1.かかりつけ薬剤師とは?
かかりつけ薬剤師とは、患者から指名を受け、服薬指導や在宅医療のサポートをする薬剤師です。患者の服薬情報を一元管理し、薬物療法や健康・介護に関する相談にも対応しながら、地域に根ざした支援をおこないます。
2016年4月の診療報酬改定から制度が始まり、2022年7月時点では、薬局全体の58.4%がかかりつけ薬剤師指導料の届出を出しています。
かかりつけ薬剤師制度ができた背景
日本では、薬物療法の安全性や効果を高めるために、病院と薬局がそれぞれ医薬品をチェックする医薬分業が採用されてきました。しかし、2015年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」によると、複数の医療機関や薬局を利用する患者が多く、患者の服薬歴を十分に把握できないなど、制度運用上の課題があると指摘されています。
また、日本の高齢化が進むにつれて、複数の薬を服用することで起こるポリファーマシーの問題も顕在化しています。高齢者はさまざまな疾患を抱え、複数の薬局を利用することが多いため、薬剤師は残薬調整が困難になり、多剤投与のリスクなどが発生していました。
これらの課題を解決するため、服薬情報を一元管理し、適切なアドバイスをおこなう「かかりつけ薬剤師」制度が誕生しました。
2.かかりつけ薬剤師の役割
服薬情報の一元管理
かかりつけ薬剤師は、患者の服薬情報を一元的に管理して、重複投与や相互作用を防止する役割を担います。患者へのヒアリングを通じて、市販薬やサプリメントなど、処方薬以外の服用状況も総合的に把握し、より包括的な健康管理をサポートします。
夜間・休日の対応による在宅医療のサポート
かかりつけ薬剤師は、患者の急な体調変化や薬の副作用、誤飲、服用のタイミングなどの相談に、24時間体制で対応します。また、夜間や休日の救急外来などで処方箋を受け取った患者への調剤に対応することもあります。
これまでは、担当の患者に対して、1人のかかりつけ薬剤師による24時間対応が求められていました。しかし、2024年の診療報酬改定以降、やむを得ず患者に対応できない場合は、同じ薬局に勤める別の薬剤師が対応することも可能とされています。
医療チームとの連携
かかりつけ薬剤師は、服薬情報や処方内容を確認し、処方医へのフィードバックや処方変更の提案などをおこないます。
また、地域住民からの健康相談は、居宅介護支援事業者や訪問看護ステーションなどの多職種と連携し、地域包括ケアシステムの一員として適切に対応します。
