
©フジテレビ
1.ドラマ『アンサング・シンデレラ』とは?
連ドラ初「病院薬剤師」が主人公

2020年7月より放送開始した『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』は、日本の連続ドラマでは初となる「病院薬剤師」が主役の医療ドラマ。
病院薬剤師とは、その名のとおり病院で働いている薬剤師のこと。一般的に薬剤師といえば、病院でもらった処方箋を持っていき、薬局で薬を交付してくれる人のイメージがあるかもしれません。
実は医師や看護師をはじめとした医療従事者のうち約1割は薬剤師で、そのうちの2割弱は、病院やクリニックで働く薬剤師です。あまり知られていませんが、日本には多くの病院薬剤師が働いています。
さまざまな医療ドラマがある中で、これまで「薬剤師」にスポットを当てた作品はほとんどありませんでした。これは作品のタイトル「アンサング」にも表れており、「称賛されない・知られていない」といった意味があります。
見どころ

主人公はキャリア8年目の薬剤師、葵みどり(演:石原さとみさん)。総合病院の薬剤部にて、医薬品全般における豊富な知識を活かしながら、薬の調剤や患者への服薬指導、医薬品の管理・販売などをおこなっています。
第1話では、薬剤師の業務のひとつ疑義照会(ぎぎしょうかい)がおこなわれるシーンがあります。疑義照会とは、医師の出した処方に対し、薬学的視点に基づきその適否などを確認することを指します。過去の調査(平成27年度全国薬局疑義照会調査報告書)によると、薬局で応需した処方箋の一部、具体的には疑義照会が必要だと思われた処方箋に対して疑義照会をおこなった際に、処方変更率が7割を超えていた結果もあります。
薬局と病院という違いはありますが、処方内容の確認という点において薬剤師は患者の安全を守る“最後の砦”といっても過言ではなく、その役割は非常に重要です。
2.病院薬剤師と薬局薬剤師の違い

ドラマの主役である「病院薬剤師」と、薬剤師の中で多数派の「薬局薬剤師」は、働く場所が異なることはもちろん、業務内容や患者との関わり方にも違いがあります。
■薬局薬剤師
調剤薬局で働く薬剤師の業務は、医師から出された処方箋のチェックをおこない、その処方箋に従って医薬品の計量および調製などをおこなう「調剤業務」、調剤した医薬品の効能・効果、服薬方法(使用方法)、注意事項などを患者へ説明する「服薬指導」、患者の服薬状況などを記録する「薬歴管理」、医薬品を適切に取り揃えるための「発注・在庫管理」などがあります。
ドラッグストアに併設している薬局の場合は、OTC医薬品(いわゆる市販薬)の情報提供・販売、日用品の販売や医薬品も含めた在庫管理、品出し・陳列もおこないます。
近年の「かかりつけ薬局・薬剤師」の制度により、薬局で働く薬剤師は、地元に暮らす人たちが日常的に薬や健康について相談できる存在としても期待されています。医薬品に関する知識はもちろん、健康食品や健康に関わる多様なアイテムに対して幅広い知識が求められます。また、患者と信頼関係を築くためにはコミュニケーション力も必要です。
【関連記事】かかりつけ薬剤師とは? なるための要件、仕事内容、指導料について解説
■病院薬剤師
一方で病院薬剤師は、入院患者や外来患者の調剤業務・服薬指導のほか、医師や看護師に対して医薬品の情報提供をおこなったり、院内の会議に参加し治療法を検討したりするなど、より医療現場に密接して業務にあたります。
病院では関わる職種も多く、医師や看護師はもちろん、リハビリに関して理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などから聞いたリハビリ状況をもとに薬の処方提案をしたり、また、がん患者の緩和ケアに関して医療ソーシャルワーカーや公認心理師などと連携し、薬物療法だけでなくさまざまな面から患者のQOL維持を検討したりします。
近年では、多職種がそれぞれの専門性を活かし一丸となって患者のケアにあたる「チーム医療」が主流になってきました。そのため、以前までは入院患者の使う薬の調製や説明といった仕事のイメージが少なからず先行していた病院薬剤師も、多職種とともに患者の治療やリハビリなどに参画し、医薬品分野のプロとして知見を発揮することが求められています。

