3.病院薬剤師の仕事
ここからは、病院薬剤師のより具体的な業務内容について、ドラマのシーンとも絡めながら紹介していきます。
調剤業務

薬剤師の代表的な業務で、医師の処方に基づき薬を用意し、患者へ交付することを一般に「調剤」といいます。
ドラマの第1話でも、調剤のシーンが何度か登場しました。正確性だけでなく迅速さも求められるなか、膨大な量の処方をこなしていく様子に圧倒された人もいるのではないでしょうか?
調剤業務では、まず医師から届いた処方を確認(監査)し、薬の量や飲み方、飲み合わせ、別の診療科で出された薬がある場合はその薬との重複がないかなどを確認します。処方内容になんらかの不備などがあり確認が必要な場合は、医師に問い合わせ(疑義照会)をおこないます。
処方内容に問題がないことが確認されたら、必要な量の薬を取り揃えます。この際、一回の服用分がわかりやすいように機械(分包機)を用いて、服用時点(朝食後、夕食後など)ごとにまとめること(一包化調剤/ワンドーズ)もあります。
調剤された薬は、基本的には調剤した者とは別の薬剤師が最終確認(調剤鑑査)したのち、患者へ交付されます。外来患者に対しては、薬剤師自らが薬の効能・効果、服用方法、注意点などを説明することが一般的です。入院患者に対しては、看護師を通じて届けられることもありますが、必要に応じて薬剤師自らが説明することも少なくありません。
※調剤の定義は法律で明確に定められていないため、薬を用意するまで、薬の交付まで、交付後の経過観察まで含めるなど、解釈の範囲が異なることがあります。
製剤業務
一般に販売・流通されていない薬を病院内でつくることを「製剤(院内製剤)」といいます。調合をおこない流通していない独自の薬(病院製剤)をつくったり、錠剤を砕いて散剤化したりするなど、患者一人ひとりの病態や服薬(嚥下)状況などに合わせて最適な薬や薬のかたち(剤形/剤型)をつくり出します。
医薬品の管理
医薬品の購入と保管などの在庫管理、病院内の各部署への供給と管理をおこないます。病院には毒薬・劇薬や医療用麻薬、血液製剤(血液そのもの、または血液から得られた物質を有効成分とする薬)などの厳重に取り扱うべき医薬品もあるため、法律に従い安全に管理します。また、医薬品の品質が維持できるように、適切な温度や湿度での保管や遮光などの管理も欠かせません。
医薬品情報業務(DI)

医薬品情報業務は「DI(Drug Information)」とも呼ばれます。製薬会社や論文などの専門文献、インターネットなどから科学的根拠に基づく医薬品の情報を集めて分析・評価をおこない、スタッフが参照しやすいように管理します。
また、医師や看護師、患者などからの薬に関する問い合わせが届いた場合は、適切な内容・量の情報をわかりやすい形で提供することも業務のひとつです。
ドラマでは、医薬品情報を取り扱う「DI室」の責任者として、ベテラン薬剤師の荒神(演:でんでんさん)が登場しています。
入院患者への服薬指導

入院している患者や家族に対して、治療に用いる薬の効能・効果、服用(使用)方法、注意点などを説明します。薬の効果がどのくらい出ているかなどを確認し、仮に適切に薬が使えていない場合は、医師や看護師らと協議し、より良い方法を検討していきます。
患者が日常的に使用している市販薬や健康食品などを確認し、治療のために見直したほうがいいものがあれば医師に提案することも薬剤師の役割のひとつです。
ドラマの第1話では、葵と新人薬剤師の相原(演:西野七瀬さん)が入院患者の病棟をまわり、服薬指導をおこなうシーンがありました。看護師とも連携しながら患者の病状を定期的に確認していきます。
外来化学療法
化学療法(がん化学療法)とは抗がん薬を用いた治療のことです。近年では外来での化学療法の実施が一般的になり、薬剤師の出番も増えています。
薬剤師は、抗がん薬の治療計画書(レジメン)の内容を確認し、患者に抗がん薬の効果や副作用などの注意事項を説明します。治療の経過を見る中で処方の見直しが必要になった場合は、医師へ提案をおこないます。
抗がん薬の調剤も薬剤師がおこないますが、抗がん薬は調製中に誤って曝露した際の毒性が強いため、調剤者自身が健康被害を受ける可能性があります。無菌調剤室などの設備を活用し専門的な取り扱い知識のもと、安全に配慮し注意しながら調剤します。
治験業務

治験とは、国より製造販売承認を得るためにおこなわれる新薬の臨床試験で、薬剤師も関わります。
医薬品医療機器等法(通称:薬機法/旧薬事法)に定められている「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」によると、治験業務に携わる薬剤師には、専門的な立場から治験責任医師の業務を支援すること、治験薬を適正に保管・管理すること、治験の計画書に従って治験薬が適正に投与されているか確認することが義務づけられています。
ドラマでは、薬剤部副部長の七尾(演:池田鉄洋さん)が治験管理を担当しています。今後の展開で、治験に関するシーンも登場するかもしれません。
救命救急業務

救急患者を受け入れている病院では、薬剤師も医師や看護師らとチームを組み、救命救急業務にあたることがあります。一刻を争う救命救急の現場では、わずかなミスや時間の経過が生命予後に直結するため、より高度な医療知識と迅速な判断力が求められます。
薬剤師は搬送された患者の状態に合わせ、使用する薬剤の選択や投与量・方法などを提案します。また薬に関することだけではなく、薬剤師も心臓マッサージなどの心肺蘇生のように普段は医師や看護師が主導する業務のサポートをすることもあります。
ドラマの第1話でも、スズメバチに刺され搬送された救急患者に対して、葵が心臓マッサージをおこない、医師らと協力して一命を取り留めるシーンがありました。
4.さいごに
これまであまり知られてこなかった薬剤師の仕事に迫る『アンサング・シンデレラ』。どのような薬剤師ならではのエピソードが繰り広げられるか、今後の展開が楽しみです。
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写真・情報提供:
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