都市部の生活に疲れ、人間らしい暮らしをしたい人の地方への関心が高まっている。そんななか猟師免許を持ち、北関東の山間部で狩猟生活をしながら役者業をし「山の中で楽しく遊んで暮らしているだけ」と話す東出昌大のもとには、山の生活に憧れ、彼の生き方に共感した仲間が集まる。ここでは、東出昌大の実体験をもとに綴ったSPA!の人気連載を公開。今回は前編に引き続き、今年開催した“山の学校”の様子をお届けする。2泊3日やってみて思ったこととは?(以下、東出昌大氏による寄稿)
前回は主催している「山の学校」のあらましをご説明しました。今回はやってみて生まれた悩みについて書かせて頂きます。
何が悩みか、ズバリ単刀直入に言うと「2泊3日じゃ全然足らん!!」のだ。狩猟採集民のコロニーのような共同体を目指すと書いたが、これは田舎暮らしの魅力とも根本的には通じている。なのでまずそこをご説明します。

もっと言ってしまえば、日常にその種の幸せが増えると、他者と比較し自分の優位性を確信して感じるドーパミン系の幸せとかがどうでも良くなってくる。
都会は金がかかる。新宿御苑は公園なのに入場料が500円もするし、ちょっと腰を落ち着けたくてもスタバもコワーキングスペースも金がかかる。その為には金を稼ぐ為に忙しくせねばならず、忙しくすると生存の維持に必要な食事はウーバーやコンビニ飯になり、子育てはシッターさんにお願いし、犬の散歩もお金を払ってお願いする人まで出てきた。アウトソーシングにかかる金が増えるのだ。

金の不安ってのは、将来の不安に直結するから、都会は安心安全なようだが、生命が何億年も当たり前に抱いてきた「子供を持ちたい」という欲求すらも困難なことに感じさせるのだろう。東京都は都道府県別の平均年収が最も高いが、出生率は全国でワーストだ。
田舎はお茶文化があるほどに暇な人が多く、そうなると距離も近くなり、見知った人が子育ても手伝ってくれたりする。実際、我が子はいろんなオッチャンオバチャンに抱かれ、人見知りもあまりしない。私たち夫婦も今後子供が増えることは不安では無い。

だから来年の夏は、一定期間キャンプ場を貸し切り、実際に狩猟採集民のコロニーをつくろうと思う。今までのようにおもてなしの準備はできないが、鍋には鹿汁やほうとうを常に用意し食べ放題。あとは米を炊いたり、魚を捌いたり、吊るされた獣から食べたいだけ肉を剥いだり、各々やってもらう。
夕暮れ時、山が西日を浴びてオレンジと紫の光に包まれる頃、それぞれのテントから炊事の煙が上がり、前を通りかかった同じ参加者さんに、「これ食います?」なんて差し出したりする風景。実現すると良いなぁ。
<文/東出昌大>
―[誰が為にか書く~北関東の山の上から~]―
【東出昌大】
1988年、埼玉県生まれ。’04年「第19回メンズノンノ専属モデルオーディション」でグランプリを獲得。’12年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。現在は北関東の山間部で狩猟生活をしながら役者業をしている

