“早期解散”や“越年国会”の噂は泡のように消え、政局は静かな均衡へ戻った。しかし、その安定は本物か。ガソリン減税や年収ラインの引き上げという見せ場の裏で、防衛増税や利上げの気配が忍び寄る。短期的な小手先の成果が長期的な政治と経済の行方を曇らせるならば、それは歓迎すべき安定なのか――(以下、憲政史研究家・倉山満氏による寄稿)

◆「早期解散」「越年国会」「連立離脱」何も起きなかった
大山鳴動して、鼠一匹出なかった。早期解散だ、会期延長して越年国会だ、果ては日本維新の会の連立離脱だ、と無責任な意見が垂れ流されたが、何も起きなかった。まず解散。自民党は権力を維持するためなら、やると決めたら如何なる手段を用いてでもやる。だから絶対に無いとは断言できないが、日程的に相当無理があるとは指摘しておいた(12月9日号)。だが常識で考えれば1月に選挙など無理がありすぎる。政界では、解散は遠のいたと見られている。
会期延長にしても、誰も年末年始を返上して国会審議などやりたくなかろう。国会議員は、一日に何件も忘年会新年会を梯子しなければならない。この時期に、選挙区を空けたい議員などいない。
衆議院の定数削減をめぐって、維新が連立離脱をちらつかせてまで実現を迫ったが、審議入りすらできなかった。結果、維新の吉村洋文代表が上京して高市首相と党首会談、一月からの通常国会で成立を目指すことで合意。
この過程で自民党筋からは、「強く言われても、できない話はできない」「そんなに連立離脱を言うなら、他の党と連立を組んでも良い」との声まで聴かれ始めた。
◆三年後の総裁選を見据えているのではとの観測も
維新の主張は「比例代表を中心に50議席削減せよ」だ。比例代表は少数政党に有利な制度。それをたった二週間で与党だけで決めたら横暴だ。さすがに最初から不可能な話だったのではないか。どうも、維新(の特に幹部)に疲弊しているようだ。野党は、定数是正を求める維新と激しく対立した。政治改革を求める、政治活動費の廃止などの法案を通過させたが、正直まだやっていたのかの感がある。そこへ定数削減を出されたので、「政治改革と選挙制度の抜本改革が先だ」と野党が反発し、収拾が見えなくなっている。選挙制度を論じ始めたら、議員の身分に関わる事なので、一年や二年では済まない。もう高市首相は、いっそ三年後の総裁選を見据え、その直前に参議院選挙があるので、そこで衆参同日選挙をやるまで解散しないつもりではとの観測まで出始めた。我が国の憲政を浄化してくれるなら、大歓迎だが。

