
親の焦りが、不登校の子どもを追い詰め、結果としてひきこもりや家出に陥ってしまうことも。自己否定の塊となっている子どもに対し、家庭が安全地帯として機能しなくなったとき、子どもは「部屋に閉じこもる」か、外の「危険な大人」に依存するかの2択を迫られます。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校児を孤立させ、反社会的な勢力に取り込ませてしまう、家庭内の悪循環について解説します。
焦りから励ましてしまう親
親は学校に行けなくなった子どもをなんとかしなくてはいけないと焦り、子どもの行動を促すために必死に説得を試みます。けれども、その段階では言葉で子どもを動かすことはほぼ不可能です。
自信喪失状態に「がんばれ!」は逆効果
不登校になった子の心は、自己否定の塊です。「学校に行かなくてはいけない」とわかっているのに「どうしても行けない」という葛藤。親の期待に応えられないゆえの自己肯定感の低下。同年代の友だちに置いていかれてしまう焦りや勉強が遅れることへの不安など。
「がんばればできる」と励まされれば励まされるほど、それができない自分に落ち込んで苦しみます。ましてやその苦しみのなかで、最後の頼みの綱である親から「甘えるな」「怠けるな」などと言われれば、絶望とともに強い反発を覚えるでしょう。親は子どもの将来が心配なので、つい先のことをあれこれ口にしがちです。でも、いま足が踏み出せない子どもには、将来のことを考える余裕はありません。親があれこれ言えば言うほど不安とイライラがかき立てられて混乱してしまいます。
親が子どもに対してすべきなのは、子どもの気持ちを受け止め共感することです。厳しい叱咤激励をくり返すことは、親子の信頼関係を壊してしまうので、避けなくてはなりません。
〈不登校対応の6つのポイント〉
1.まず話を聞く
イエス/ノーで終わる会話ではなく「どんな気持ち?」「どう思う?」と問いかけ、本人が状況を話せるように促す。
2.共感する
子どもの発言や態度を、なじったりばかにしたりせず、真剣な態度で聞き、「そうなんだね」「大変だったね」と共感を示す。
3.安易に励まさない
「がんばって」「できるよ、大丈夫」などと安易に励まさない。それは親自身の不安から出た言葉ではないか、振り返ってみよう。
4.急がない
急いで結論を出そうとしない。無理強いせず、子どもが動かないことに感情的にならない。子どもの自主性を尊重する。
5.責めない
子どものことも自分のことも、パートナーや祖父母のことも責めない。誰のせいでもないことを理解する。
6.学校と連絡をとる
子どもの様子をよく観察し、担任や養護教諭と連絡をとり合っておく。困ったときに相談できるようにする。
共感を示さず、ただ励ますと、苦しみを増やしてしまう
親は子どもの話を聞くとき、意見を言ったり反論したりせず、最後まで聞きとり、共感を示しましょう。親が子どもの話に共感すると、子どもは「気持ちを受け止めてもらえた」と感じます。それをきっかけに精神的にも落ち着いてきます。
子どもと話すときには、子どもの立場で考えてみることが大切です。その言葉は本当に「子どものために役立つ」言葉なのでしょうか。「子どものことを思って」といいながら、じつは親が「自分の不安を消したいがため」「自分が安心するため」の言葉になっているのではないでしょうか。声に出す前にひと呼吸置き、自問することが必要です。
〈食事は一緒にとる〉
食事はなるべく家族一緒に。いやがるときは無理強いせず、少しずつ環境を整えます。特別な会話がなくても、一緒に食卓を囲むうちに気持ちがほぐれていくものです。子どものよい点をほめ、兄弟姉妹と比べないよう気をつけます。
不登校の子、家で受け入れてもらえないときの行動
不登校の子の心の拠りどころは基本的に母親。でも、母親に受け入れてもらえない子もおり、そのとき子どもがとる態度はふたつあります。
ひきこもる子ども
ひとつは自分の殻に閉じこもるパターンです。このパターンの子の母親は、顔を合わせれば「学校に行きなさい」としか言わず、子どもの話を聞こうとしません。期待をかけたわが子が不登校になったことに失望し、「自分の夢を託した子なのに」と、子どもを否定してしまいがちです。父親がもともと疎遠で、母親との関係に亀裂がある家庭も見受けられます。
こうした家庭では、子どもは自室にひきこもってしまいます。母親は部屋の前にご飯を置くしかなく、子どもは自室で食事をとり、後はスマホやゲームに没入します。なかにはうつなどの精神疾患を発症する子もいます。誰も発症に気づけないまま、なかなか治療につながらないこともあります。
親、とくに母親が子どもを受け入れ、現状を認める意思を子どもに示すことが大切です。困ったことに、自分に閉じこもった子どもに、カウンセラーや医療者が親御さんを通じて働きかけるのは難しいものです。母親とのカウンセリングのなかで、子どもの幼少期のことなどを回想し話してもらうことで、徐々に母性的受容の姿勢をとれるよう母親を支えます。
飛び出す子ども
もうひとつのパターンは、家庭の外部に存在する「疑似家族」への接近です。子どもは自分が家族に受け入れられないと感じると、家を出て「疑似家族」に走ります。かつては非行集団や反社会的勢力が受け皿になっていました。しかし、時代とともにこうした組織は地下化しています。SNSなどを通じて巧妙な手口で、女子は性犯罪に、男子は組織犯罪に巻き込まれるリスクが高まっています。
これを防ぐには、子どもに「家庭にいてもいい」という安心感を与えることです。親は怒りで子どもをコントロールしようとせず、穏やかに気持ちを聞きながら関わる必要があります。強制的にSNSを断ち切ると反発して逆効果になるので注意しなくてはなりません。
[図表1]親との信頼関係が保たれている
[図表2]親との信頼関係が崩れている
齊藤 万比古
恩賜財団母子愛育会
愛育研究所顧問
