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“夫婦喧嘩は犬も食わない”とよく言うように、当事者にとっては真剣な揉め事かもしれませんが、周囲の人間からすると全くの無関心な行為にすぎません。ただ、場所によってはそうも言っていられない場合もあります。
今回は、乗り合わせたバスの車内で乗客の夫婦喧嘩に巻き込まれた不運な男性のエピソードです。

◆前の座席の夫婦が突然ケンカし始めた
取材に応じてくれたのは、目黒駅の近くにある税理士事務所に勤務する宮内さん(仮名・31歳)です。自宅は世田谷にあり、以前は通勤に電車を利用していたそうですが、最近はバスを利用しているそうです。「出勤する時は主に電車を利用しているのですが、帰りはほとんどバスですね。電車よりもは30分以上も時間がかかりますが、バスの場合は停留所が自宅の近くにあるので、時間さえ気にしなければのんびり本でも読んで帰れるので好きなんです」
聞くところによると、宮内さんの特等席は最後尾のシートだそうです。バスは目黒駅が始発なので、ほぼ確実に定位置が確保できるのだとか。
最近お気に入りの女性作家の最新長編小説を読んでいると、しばらくして前の席から言い争うような会話が聞こえてきたといいます。
「なんだか前の席が騒がしいんですよ。しかも、何やら揉めているような雰囲気なんです。最初は小さな声でしたが、女性の声が次第に大きくなっていきました。それも、『てめぇ』とか、『もう一度言ってみろよ』とか、すごく下品な口調でかなり迫力がありましたね」
気にせずに読書に没頭しようとしたそうですが、次第にそれが不可能になるくらい、激しい言い争いになっていきました。
◆突然、額に鋭い痛みが走った
しょせん他人の夫婦喧嘩だと自分に言い聞かせ、宮内さんはカバンからイヤホンを取り出して、音楽を聴きながら読書を続けることにしました。「バスや電車でイヤホンをするのはあまり好きではないのですが、今日は読書に集中したかったのでイヤホンの力を借りることにしました。
さっきまでの夫婦喧嘩の言い争いは、最近お気に入りのK-POPアーティストの楽曲でほとんど聴こえなくなりました。ところが、その数分後、突然おでこの辺りに鋭い痛みが走ったんです」
激昂する女性が振り回したショルダーバックの金属部分が宮内さんの額に当たったそうです。それを見た女性の夫と思しき男性は、女性が振り回していた手をねじ伏せたのでした。

