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「授業料を払わないと除籍」奨学生期間の満了を告げられた中部大生が、大学への抗議で資格を復活させるまで

「授業料を払わないと除籍」奨学生期間の満了を告げられた中部大生が、大学への抗議で資格を復活させるまで

◆SNSで訴えを続け、大学の態度が急変

担当者の態度や書面の内容を踏まえると、大学との交渉の余地はもはやないと認識した阿部さんは、訴訟を起こすことを決意。独力で書面準備を進めていたところ、事態は急変する。

6月5日、学生支援課の担当者から「阿部さまと本学との見解の相違によりご心配をおかけし誠に申し訳ございません。改めて、阿部様のご主張を明確にご提示いただけますとありがたいです」とメールがあった。「親に除籍通告まで飛ばしておいて何言ってんの」と喧嘩腰の文面を返したが、その約3週間後に当たる6月26日、大学から「先日、阿部様よりメールを送付いただき、ご主張について改めて慎重に検討を重ねた結果、特別奨学生の資格復活を決定しました」と、阿部さんの主張を全面的に受け入れる連絡が入ったのだ。

7月11日、面談のため大学に足を運ぶと、職員の態度は一変していた。
「学生支援課から計3人の職員が出てきて『この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ありません』と、深々と頭を下げられ、’25年度分の特別奨学生向けの書類を渡されました。ただ自分は除籍になる覚悟で、4月からの講義には出ていなかった。『今更復活を言われても解決にならない』と、書類の受け取りは辞退しました」

後日、改めて内容証明郵便で復学の条件を問い合わせたところ、大学側からは「復籍された年度について、特別奨学生資格を復活させる措置を講じ、授業料、施設設備費、教育充実費に相当する額の納入を免除し、これをもって相殺する」(原文ママ)との回答があり、再び大学に通うかどうか慎重に検討を重ねている最中という。



一時は除籍を予告する書面まで送付しておきながら、なぜ大学の対応は一変したのか。同大学生支援課に特別奨学生の適用期間や取消期間について詳細を問い合わせたが、返ってきたのは「学生の個人情報に関わるため回答は差し控えさせていただきます」という回答だった。

態度の変化について、阿部さんは、「SNSを併用していたことが影響したのでは」と分析する。
「大学とのやり取りや、取材を受ける可能性があることなどについて、Xで逐一状況を報告していました。7月11日の面談でXの投稿内容について触れたところ、『存じ上げています』と言われたんです。大学の側も最初は『相手は学生、強めに出ておけば折れる』という姿勢が透けて見えましたが、事態を公にすることで、多少なりとも流れを変えられた部分があったのでは」(阿部さん)

当初、阿部さんがやり取りした職員の発言にもあったように、規模の大きな学校組織ほど、「一度決まったことを覆すのは難しい」という認識は強い。そのため、SNSなどでは「いち学生が異議申し立てを行っても何も変わらない」という冷めた見方が生まれがちだ。しかし、事実材料を集め、かつ継続的に訴えを行うことで、大学の側が誤りを認めるケースもある。こうした「小さな成功例」があることは知られていいだろう。

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
配信元: 日刊SPA!

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