2010年、他社のアクシデントで巡ってきた“チャンス”
ジャムコが厨房設備、化粧室の次の柱として力を入れているのがシートだ。内装品の花形であるシートは、機能性と安全性が重要であるのはもちろん、航空機内の雰囲気に影響を与えるため、航空会社はシート選びにこだわる。
ジャムコは参入のチャンスをうかがい準備を進めていたのだが、2010年に転機が訪れる。
当時、シンガポール航空(SQ)がシートの製造を依頼していた小糸工業がトラブルを起こし、シート製造が止まっていた。SQは導入予定のエアバスA380に搭載するシートがなくて困っていたのだ。
小糸工業の代わりにシート製造の依頼を受けたジャムコは、短期間で安全性試験と製造をやり遂げてSQから高く評価された。それ以降、SQのシート入札に参加できるようになり、今ではSQ以外のさまざまな航空会社にも納入している。
シート製品の成功により、内装品事業全体への相乗効果も期待できる。ジャムコは厨房設備、化粧室のほか、コックピットの内装品やドア、客室床板なども手がけている。そこにシートが加わり、旅客機内装品のすべてに対応できるようになった。今では航空会社からの内装工事を一括受注することも可能だ。
いまでは内装のみならず、「エンジン部品」や「構造部材」も製造
ジャムコが製造するのは内装品だけではない。溶接、ロウ付け(合金を溶かして接着剤のようにして金属と金属を接合する技術)、放電加工、レーザー加工、非破壊検査といった技術と航空宇宙関係で要求される認証を保有し、航空機エンジン部品や空調用機器も製造している。
さらに炭素繊維を使用した構造部材も得意とする。炭素繊維は高温処理によって炭素の分子が独特の結晶構造で強く結びつくため、軽くて丈夫という特徴がある。重さは鉄の約4分の1で、強度は約10倍。さびにくく耐熱性にすぐれている。航空機に使用するのに適した素材だ。
炭素繊維を使用した垂直尾翼用の構造部材は、エアバス機(A350を除く)に使用されているほか、エアバスA380型機の二階床の構造部材は2003年から独占供給を続けている。
7月に「上場廃止」も、約束されたさらなる発展
航空機生産には厳格な安全基準や各種の認証制度などがあり、容易に参入できないため、簡単に競合が現れることもない。一度、航空会社や航空機メーカーと信頼関係を築くことができれば仕事はしやすいし、簡単に取引が解消されることもない。
ジャムコは2025年7月17日、米投資ファンドのベインキャピタルによる買収にともない東証プライム市場への上場を廃止した。ベインキャピタルの傘下に入ったことで財務体質が安定し、設備投資や人員増強をしやすくなったと言える。
世界の民間航空機市場は年率3〜4%で増加する成長市場であり、ジャムコの業績は市場拡大とともに今後も伸びていくだろう。
田宮 寛之
東洋経済新報社
編集局編集委員
