
◆喧嘩の絶えない両親のもとで育つ
聡乃さんが生まれたのは静岡県。家族は父母のほか、弟が2人いる。「家庭が息苦しい」と明確に感じたのは、10歳くらいの頃だった。喧嘩の絶えない父母は、やがて喧嘩すらしない“冷戦”に移行した。モラハラ気質のある父親、人間関係が長続きせずすべての不満を愚痴として垂れ流し続ける母親。長女である聡乃さんは、両親のそれぞれに対峙する役割を担った。「母は職場での人間関係がうまく行かず、学生時代の私を捕まえては愚痴をこぼし続けたあと、決まって『ママ悪くないよね?』と言うんです。聞いてみると、母は会社で気に食わない人を無視するなど、社会人としてはやや幼い面がありました。けれども、肯定してあげないと拗ねてしまうので、思うところがあっても飲み込んでいました。私も学生なりに辛いことがあって、母に打ち明けてみようと思ったことがありましたが、母は『そうなんだ。それでママはね……』とどんな話も自分の話にすり替えてしまいます。
父はそんな母をあからさまにバカにしていて、私たちきょうだいに『ママみたいになるなよ。あれは悪い例だから』とせせら笑っていました。父は直情径行な部分もあって、机を叩いたりモノにあたることもあり、すぐに怒鳴るので、私はあまり近づきませんでした」
◆両親が離婚しなかった“意外な理由”
仲が悪くリスペクトに欠けるならば離婚はしないのか。かつての聡乃さんも、同様の疑問を婉曲的に表現したことがあるという。だが母親の答えは意外なものだった。「母は『シングルマザーなんてありえない』と言っていました。周囲にはシングルで頑張っている人もたくさんいたし、個人的にはそんなことはないと思いましたが、彼女は思い込んだ価値観を絶対に曲げません。たとえどんなに実態として仲が悪く、愛情がなくても、“素晴らしい家族”というハリボテを必死に守りたいようでした。
もうひとつ、母は『女は男に尽くして当然』と思っている風がありました。旦那から蔑まれているつらい状況を肯定するための虚勢だったのかもしれませんが、はっきりとそう口にするのを聞いたことがあります」

