◆「数日間同じ洋服を着ていたこと」を友人に指摘され…
徹底して世間体を重視する母親は、現状を受け入れることで臭いものに蓋をし続けた。それはたとえば、こんな場面でも同様だ。「家庭でのさまざまなことがストレスとなり、中学生になったある日、朝起きたら身体が動かなかったことがありました。鬱のような症状が出てしまったんです。母に伝えると、不登校なんてとんでもない、といった感じで取り乱し始めました。発狂しかたように、私の手を掴んでグイグイ引っ張るのです。母にとっては、不登校は逸脱行動であり、許容できないものだったのでしょう。その日は、私は家を出てから神社などにいましたが、結局は先生たちに見つかってしまいました」
聡乃さんが記憶する家庭での日常の一コマは、なかなかにインパクトがある。
「母はネグレクト気味で、『きょうだい3人でわけて』と出された朝食がゆで卵ひとつと生ハム1枚だけだったこともあります。かと思えば、母がせっかく作ったご飯を父がそのまま三角コーナーに捨て、黙々と自分で料理を作ったあとに『お母さんのより美味いだろ?』と私たちに出したこともありました。
ほとんどの日において食事が足りないので、私はいつも給食を他人よりもがっついて食べていました。シャンプーやリンスを使ったこともなく、全身を石鹸で洗うものだと思っていたので、『どんなシャンプーを使っている?』みたいな女子トークにもついていけませんでした。数日間同じ洋服を着ていて、それを友人から指摘されて『同じのをたくさん持ってるんだよ』と苦し紛れに答えたこともあります」
◆中1のときに「一線を越えた」出来事
絵としてわかりやすい親からの暴力があるわけではないものの、ゆるやかに苦しい時間が続く。攻撃的で家族を見下して憚らない父親と、子どもに自らの精神的なケアをさせておきながら子どもには一瞥の関心もくれない母親の間で、聡乃さんの精神は徐々に蝕まれていった。中学校1年生のおわり、逃げ場のないストレスから、ついに“逸脱行動”に走る。
「ネットを介して知り合った男性に、下着を売ったり性的な類似行為をすることで対価をもらうようになりました。当時は中学生でしたが、小学生だと身分を偽っていたんです。すると、そうした趣味の人たちが使用済みの下着を欲しがりました。高い人は3万円の値で買っていきました」

