◆外国人客が急増した理由

なぜ新幹線でオーバーツーリズムが起きているのだろうか。事情に詳しい旅行ライターA氏に話を聞いた。
「東海道新幹線が訪日外国人客で混雑する要因の一つにジャパン・レール・パス(JAPAN RAIL PASS)があると思います。これはJRグループ6社が共同して提供するパスで、訪日外国人のみが購入できる、いわゆる乗り放題パスです(※一部例外規定あり)。当初、東海道新幹線におけるジャパン・レール・パスは『ひかり』と『こだま』しか乗ることが出来なかったため、『ひかり』の混雑が問題となっていました。しかし、2023年より追加料金を支払うことで『のぞみ』にも乗車が可能になり、加えて『のぞみ』の自由席車輌が減らされたこともあり、自由席が大混雑するようになってしまったのです」
ジャパン・レール・パスはその値段の安さも問題視されたこともあり、価格は改定され、7日間で大人1人5万円。東京―新大阪の移動で「のぞみ」に乗車する際はプラス4960円が必要となる。
◆乗客の善意で保たれていた荷物問題
A氏によると、プラス料金があっても「円安も加味すれば、世界的にはまだまだ安い」という。また、スーツケースなどの荷物問題についても、まだまだ課題が多いと指摘する。「荷棚も『ここからここがこの座席番号』という規定も特になく、持ち込める荷物のサイズについて注意をすることもまれです。現状、荷物問題については“乗客の善意”に頼っています。最後部座席の後ろを最後部座席を予約した人が荷物を置けるようにしたり、特大荷物を車内に持ち込む際は『特大荷物スペースつき座席』や『特大荷物コーナーつき座席』を予約するようにアナウンスしてますが、たまに旅行する日本人だって荷物サイズの規定について知らない人が多いくらいです。せめて荷物に対するアナウンスの強化くらいはするべきでしょう」
A氏によれば、欧州では鉄道会社で異なるものの、荷物のサイズは持ち込める数などが飛行機のように決められており、違反した場合は罰金が科されることもあるという。その代わりに荷物専用の車輌があるなど、乗客に寄り添った対応がなされているようだ。
訪日外国人の増加は観光立国としての成功の裏返しでもあるが、その波が新幹線という“日本人の日常”にまで押し寄せている現実を見過ごすわけにはいかない。観光客もビジネス利用者も気持ちよく移動できるよう、インフラ側の早急な対応と、利用者側のモラル向上の両輪での改善が求められている。
文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

