いつまでも輝く女性に ranune

地球にやさしい“アルティザン”「Land & Monkeys」100%プラントベースのお店がパリジャン達に話題の理由とは?

次世代に“どういう地球を残すか”

Q.なぜヴィーガン・プラントベースの世界へ入ろうと思ったのでしょうか?

芳美さん「日本で約10年パン職人として働いたのちにパリへ。その後夫と出会い、会社を立ち上げて『ヴェジタリアンに移行しないか?』と夫に言われたのが2015年。家からも動物性を排除するということ”は、生活を大きく変えるものであり、最初はどうしたものかと思いめぐらせてすぐに飲み込めませんでした。その時に『メゾン・ランドゥメンヌ』を立ち上げました。そこから「Land & Monkeys」を2018年から準備しローンチしたのが2020年です。

夫は動物擁護団体『L214』と知り合ったことがきっかけでヴェジタリアンに傾倒。夫の両親も同じ理由でもともとヴェジタリアンでした。私はヴェジタリアンとは何か?というところから色々と勉強していく中で、ふと日本においては精進料理があり、日本人としても共通点があるのではないかと考えました。パリにいたこともあり、日々の食事は洋食だったのでいっそのこと和食に切り替えてみようと思い、そこからヴィーガンの生活が始まりました。意外と和食は肉(動物性)が少ないと気づき、その動物が環境問題につながっているのではないかと意識しはじめました。

そこからリサーチをはじめました。地球環境のことを考えると、放牧や牛の飼育による温室効果ガス(メタンガス)の排出(ゲップや排泄物から)の環境への悪影響は周知だと思います。食事における二酸化炭素の排出量で89%が動物性由来であったり、食事に由来することが多いと気づきました。もちろん化石燃料を減らして持続可能なものにするとかCO2の排出量が大きいので飛行機を1回のらないとか、そういうことも大事なことかもしれませんが本当の意味でCO2を削減するためには日々の食事が大切だとわかりました。私たちはパン屋なので、そこに取り組むべきではないか?そう夫と決断し立ち上げたのが17年前です。

そこでぶち当たったのが私たちがパン屋として運営している「メゾン・ランドゥメンヌ(Maison Landemaine)」です。「メゾン・ランドゥメンヌ(Maison Landemaine)」では、当たり前のように卵もバターも使っていました。そこで夫も私も矛盾を感じてしまったんです。

そこで行き着いた考え方というのは、ターゲットはあくまで「マス」。その意味で「メゾン・ランドゥメンヌ(Maison Landemaine)」必要なブランドであり、マスに向けてのアプローチをしていこうと決めたんです。実際このお店は3割ぐらいの商品がプラントベースです。

そして2018年に私たちが次に着手したのはプラントベースの食材のイノベーションです。卵の代替品となるYUMGOの開発でした。卵は呼吸によって二酸化炭素(CO2)を多く排出するもので、当時は卵に代わるものはありませんでした。お菓子作りおいても卵はもっともよく使うものだったので、卵に代わるものは絶対に必要だと思っていました。」

Q.2020年に「Land & Monkeys」を立ち上げたのは、なぜですか?

芳美さん「食に携わるものとして、もっともっと何かできないか? その時に考えアイデアとして出たのが『Land & Monkeys』です。国も大企業も環境問題において“二酸化炭素(CO2)の削減をやらなきゃ”と口をそろえて言いますが、どうしていいかわからないというのが現状です。食の面からのフォローアップをすべきだと思っています。

初めの入り口は動物保護だったけれど、今は私たちが考えていることは次世代にどういう地球を残すか。です。」

「ベジタリアン」ではなく「フレキシタリアン」という選択

フランスでは完全なるヴィーガンではなく『今日はお肉を食べるのをやめよう』という選択をする“フレキシタリアン”が多くなっていると芳美さんは話します。

芳美さん「自分たちが食べているものが直接CO2を排出しているという意識は持ちづらいかもしれませんが、単純に乳製品や肉・魚をやめるだけでも、CO2年間排出量の約1.2トンを減らせるという計算。全部排除することは難しくても、適宜選択するというフレキシタリアンになれば、また、一人ではなく世界中に広がっていけば、当然CO2排出量は減っていきます。“フレキシタリアンであることが凄くスマートでおしゃれだよね”そういう価値観がもっと広まっていったらいいなと思っています。そういう意味でフランスでは都心部ですが、意識が変わってきています。そこが日本との大きな違いかもしれませんね。」

今回取材をしながら、未来のことをみんなで‟少し考える”だけでも大きな前進になるのではないか? そして食べても、作り手も少しずつみんなで前進していくことの大切さを肌で感じた。日本でも年々異常気象が続き、果物や野菜の収穫にも大きな影響を及ぼしている。

当たり前の「食」を守るために、何をすべきか?は我々の創造する以上に難しいことではなく、日々の衣食住に根付いている。そう気づかされる取材だった。

profile
Yoshimi Ishikawa Landemaine
石川芳美

夫でありパティシエのRodolphe Landemaine(ロドルフ ランドゥメンヌ)と、天然自然酵母を使った伝統的製法にこだわったブーランジェリー・パティスリー「 Maison Landemaine」(メゾン ランドゥメンヌ)を展開。ビーガンとオーガニックにこだわった「Land & Monkeys」(ランド&モンキーズ) もパリで店舗拡大中。

日仏の食文化交流の橋渡しをモットーに精力的に活動。また、30代から描き続けてきた絵の才能を活かし、Maison Landemaine(メゾン ランドゥメンヌ)グループ のアートディレクターを務め、アーティストとしても活動中。

取材・文・写真/坂井勇太朗(ufu.編集長)

配信元: ufu.(ウフ。)

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