
12月は、ただでさえ慌ただしい月。大掃除、仕事納め、年末年始の準備――リラックスする時間もなかなか取れず、気づけば心も体も余裕を失いがちです。そんな季節にこそ、ドイツでは伝統的に「香り」を楽しむ習慣があります。乳香や没薬、ヨモギ、針葉樹の樹脂……クリスマスから新年にかけての特別な12日間「ラウナハテ(Rauhnächte)」の期間、ドイツでは植物の香りを焚いて、家を清め、過ぎ去った一年を手放し、新しい年を迎える準備をしてきました。この記事では、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、ドイツの年末年始に根づくお香文化と、お香に使われる10種の植物、現代の暮らしに取り入れるヒントをご紹介します。
何かと忙しく休む間がない年末

一年の最後の月、12月には、年末に向けて済ませなければならないさまざまな特別なことが目白押し。これだけのタスクをこなさなくてはならないのだから、この月はもっと日数があってもよいのでは……と毎年考えてしまいます。そんな忙しい年末は、一定のストレスがかかることは確実。いろいろな仕事を年内に終わらせるラストチャンスということもあって、リラックスタイムもなかなかゆっくり取ることができません。
大掃除ですべての部屋をすっきりさせ、クリスマスや年末の特別な食事を用意し、そして庭も整理しなくてはなりません。寒冷地や標高の高い場所では、庭の掃除は9月か遅くとも10月までに済ませる必要がありますが、私の暮らす地域は、太平洋沿岸の日当たりがよく温暖な地域なので、年末でも庭掃除ができます。

使わなくなった古い鉢を処分したり、使っていないコンテナを掃除したり、低木や庭木を剪定したり。必要のない水やり道具やホースは片づけ、残念ながら枯れてしまった植物はコンポスト材料にしましょう。トレリスや支柱はきれいに掃除し、すっきりと乾いたガーデンシェッドに保管します。このガーデンシェッドがまた、なかなか悩ましい場所。暑い夏の間はほったらかしにされがちなのですが、年末は、すでに長々と続く「大掃除リスト」に付け加えるべき絶好のタイミングです。10月や11月の暖かな日に済ませておけば、もっとラクになるのですが、我が家では、今年も年末の掃除リストに加わることになりました。毎年恒例のイベントです。
植物を燃やすという行為

数年前までは、焚火をする場所や、畑で不要な雑草などを燃やしている農家の方をよく見かけました。しかし、今ではこうした光景を見ることはめったにありません。条例で禁止されているところも多く、乾燥した気候の中では危険すぎるのかもしれませんが、私にとっては日本で初めて目にした思い出深い光景です。ドイツでは畑で何かを燃やすことは一般的ではなく、多くの場合、農家は収穫後の残りは土に戻します。冬の間凍ったそれらは翌春堆肥になり、新しい苗の肥料となります。

畑での焚火が見られなくなった現在でも、火が途絶えないのは寺社仏閣ですね。寺院の前にある大きな炉には線香が供えられ、煙がたなびいています。こうした煙には空気を浄化し、祈りを運び、瞑想を助ける力があると考えられています。これは仏教に根ざした儀式であり、同時に洗練された香道でもあるのでしょう。
