◆恋人に手紙でフラれ、途中で投げ出す兵士も
ーープライベートでの制限とは、具体的には?スンジュン:訓練期間中はスマホの使用が制限されているので、外部との連絡手段は手紙などに限られます。私も最初はかなりきつかったです。社会から切り離された感じになり、久しぶりにスマホを触ったときは使い方を忘れていました(笑)。
兵役に就いている人の元に家族や友人、恋人から毎日のように届く手紙が心の支えになる一方、そこに書かれた言葉が大きな事件を起こすこともありました。
もっとも印象的だったのは、恋人から別れを告げる手紙を受け取って、途中で帰ってしまった同期がいたことです。実は、訓練を途中で中断すると、最初からやり直しになってしまうんです。だから周りの人は「おまえ! ここまで頑張ったのに、振出しに戻っていいのか!?」と説得したのですが、それでも耐えられなかったようでした。
私たちはスマホの持ち込みができないので、その後、彼がどうなったかは誰もわかりません。もちろん女性側もかなりツラいものになります。そのため、軍隊に行った彼氏を待つ女性たちが集まるオンラインコミュニティもあるほどで、情報交換をしたり、互いに励まし合ったりしながら支え合っています。
◆数少ない楽しみは“お菓子を食べられる”宗教活動
ーーひたすら過酷なエピソードが多いのですが、楽しみはなかったのでしょうか?スンジュン:多くはないですが、宗教活動はとても楽しみでした。週末になると部隊内の教会や寺院で自由に宗教活動に参加でき、実際には信仰心のない兵士も参加していました。
理由は、宗教活動に参加するとチョコパイやスナックなどのお菓子が配られるからです。兵役中は食生活も管理されているため、お菓子はとても貴重な存在です。私はチョコパイをもらえるこの時間が一番の楽しみでした。
また、兵士を励ます目的でアイドルが部隊を訪れて公演を行うのですが、これも楽しみでした。女性アイドルが慰問(いもん)に訪れると、久しぶりに女性を見た兵士たちが熱狂的に歓声を上げる。想像すると、かなり非日常なことがわかるのではないでしょうか。
=====
スンジュン氏はかなり過酷な環境を過ごしたと当時を振り返るが、それでも兵役に参加してよかったと振り返る。
「兵役は単なる義務ではなく、忍耐力や友情、責任感、そして日常のありがたさを学ぶ時間でもありました。私は今、日本に住んでオンラインの韓国語スクールを運営していますが、資金が底をつきかけてツラい時期もありました。が、兵役の経験があったので『絶対に乗り越えてみせる!』と思い乗り越えられました。そんな精神力が身についたのは間違いなく兵役のおかげです」
もし、あなたが韓国人だとしたら、この過酷な環境を乗り越えられるだろうか。
入隊すれば、日常のありがたみを今以上に感じることができるかもしれない。
<取材・文/鈴木俊之>

