◆一向に注文してこない5人家族の悪事

「その日は、電話で予約を受けていた5人家族が時間通りにお店に到着し、奥にある個室に通しました。ウチの店は、繁忙期でなければ無料で個室が利用できるので、よくある光景なんですよ」
ところが、部屋へ案内し、しばらくしても一向に呼び出しベルが鳴らなかったといいます。
「何度か個室のドア越しに『ご注文はいかがでしょうか?』と丁寧に尋ねたのですが、その後も呼び出しベルは鳴らず、3〜4回は足を運びましたかね。
厨房の前で困った様子を見せていると、店長がやってきて『吉富、元気ないじゃないか。え?あの個室、5人家族?もしかして…。俺、見に行くわ』と、店長自らが個室の様子を見に行きました」
店長の後に続いて個室に出向き、吉富さんはとんでもない光景を目にしたといいます。
「一瞬自分の目を疑いました。円卓の上には、コンビニ弁当や惣菜が所狭しと並んでいたのです。すると、客の男性が『わかってるよ、ビール1本と卵スープを頼むよ』と言ってきたのです」
◆出入り禁止に相当する事案だった
店長は、客の男性に向かって毅然とした態度を取ったと言います。「お客さん、注文いただかなくて結構です。その代わり、退店をお願いします。そして、申し訳ありませんが、今後は当店をご利用しないでください」
と、はっきりとした口調で伝えました。店長の真剣な態度に、客の子供は泣きべそをかき、母親だと思しき女性は頭を下げ、すぐに店を出て行ったといいます。
「あとで店長が教えてくれたのですが、最近、お店の周辺で同様の問題が発生しているらしいのです。無銭飲食ではないので警察沙汰にはできないようですが、今後この辺りのお店は利用できなくなるでしょうね。
しかし、不思議な客でしたね。子供たちに高級店の雰囲気でも経験させたかったのでしょうか」
それ以来、吉富さんのお店周辺で迷惑客のうわさは聞かなくなったそうです。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

