◆■「ほぼ地獄だった」スクールガール・コンプレックスの新作に漂う“不穏さ”の正体

「もう一人の男子は、嵐の松本潤くんみたいなイケメンで、そりゃあ黄色い歓声を浴びるわけです。それに対して僕は大人しいガリ勉。部活内ではほぼ空気みたいな存在で。ほぼ地獄の環境でしたね(笑)」
空気のような存在だからこそ、女子たちの集団に上手く紛れ込めた。だからこそ、見えてはいけない世界も目の当たりにすることになった。
「女子の集団の会話に耳を傾けると、誰かの悪口で盛り上がっている。するとあの時悪口を話していた子が、別の場所ではさっきの仲間の悪口を言っている。そうした光景を何度も目撃して。『ここはヤバい!』と思い、1年足らずで部活を辞めました。その体験はかなり強く刻まれ、女性不信が加速しました。だから、『SGC』の撮影で女の子が3~4人一緒になって、すぐ打ち解けて仲良くなる姿を見たとき、『微笑ましいな』と思う一方で、『いやいや、絶対裏があるだろ!』と疑っている自分もいました(笑)」
その実感を写し込みたいと考えた。
「『NSGC』には、これまでのシリーズにはなかった“不穏さ”みたいな空気を意識的に入れてます。光の入れ方も陰のほうを強調していて、ちょっとホラーっぽいくらい。女子の群れを前にした僕のアンビバレントな感情——“ホッとする”と同時に“怖い”——その両方を撮ろうと思って」
『NSGC』には青山さんの青春時代の「憧憬」と「翳り」が静かに寄り添っている。その相反する二つの同居が作品を美しく、妖しく輝かせているのだろう。
◆■「青春を終わらせる」のは、簡単。でもそれは、たぶん嘘

「僕、今でも女子たちが怖いんですよ。これは思春期の頃から本当に何も変わってません」
コンプレックスが完全に解消される日は、とうに来たと思っていた。だが、そうではなかった。
「感情って0か100かじゃないんですよね。『解消した!』と思っても、ふとした瞬間にまた顔を出してくる。一度、『いつまでも傷を引きずっても仕方ないよね』と思い『SGC』を卒業しようとしたけれど、それも一時の気の迷いでしたね(笑)。写真家として20年やってきたけれど、人間としては大して成長してないかもしれない。でも、それでいいのかなって。大人になってから、『全然中身は大人じゃないな』って気づく人のほうが多いように、僕はずっと青春を引きずり続けていくと思います。コンプレックスは、愛し続けてやることがいいと思いますよ」
青山さんにとって、コンプレックスは「乗り越えるもの」ではなく、「抱えたまま付き合っていくもの」なのだ。


