
台北市内のベーカリーを覗いてみると、昔懐かしいお菓子が並んでいることがある。ふわふわの生地にクリームを挟んだ一口サイズのブッセや、レモン風味のチョコレートで覆われたスポンジケーキなど、誰もが懐かしさを感じてしまう西洋由来のお菓子だ。ブッセは戦前に日本から持ち込まれ、戦後にアメリカが小麦粉を支給していた時代に発展したという歴史がある。一方、レモンケーキの発祥は台中市の『一福堂』とされる。2代目店主が1964年頃に日本視察で見かけたのをきっかけに作り始め、これが一大ブームを巻き起こして、各地に広まった。当時は高度経済成長期にあたり、異国のお菓子に興味をもつ人が増えていた頃でもあったという。今回は時代を超えて愛される銘菓を紹介してみたい。

思わず童心に返ってしまう「台湾式ブッセ」。
大稲埕にある1930年創業の郷土菓子店。寺廟の祭典に供える伝統菓子からレトロな洋菓子まで、数多くの商品を扱う。なかでも日本統治時代からの人気商品がブッセで、当時は「キュイエール」という名で親しまれていたという。これは生地の部分を指す「ビスキュイ・キュイエール」に由来し、戦後は台湾語に転訛され、「牛力」という漢字が当てられた。他店では「小西點(小さな洋菓子の意味)」、「麩奶甲(フィンガー・ビスケットの発音に由来)」、さらにその形から「台式馬卡龍(台湾式マカロン)」と呼ばれることもあり、複数の呼称をもつのが興味深い。ここのものは5㎝ほどとやや大きめ。焼き加減に細心の注意を払っているので、パサパサとせず、サクッと軽やかな食感がウリ。
十字軒糕餅舗
スーツシュエンガオピンプー
台北市大同區延平北路二段68號 02−2558−0989 9:00~19:00 日~18:00 無休 1パック18個入り150元。賞味期限は10日間。


地域密着型ベーカリー。定番のレモンケーキ。
松江市場向かいに位置し、人々の生活に溶け込んでいる街角のベーカリー。15歳からパンや菓子づくりを学んだという創業者が1972年に店を構えた。現在は2代目が跡を継ぐ。棚には昔ながらのパンのほか、パイナップルケーキや月餅などの郷土菓子、さらにスポンジケーキやクッキーなどの洋菓子が並ぶ。長寿のお祝いの際に食べられる「寿桃(桃の形をした中華まん)」も看板商品だ。商品数は100種におよび、すべてが手づくり。レモンケーキは市場で購入した台湾産レモンの搾り汁を用いており、爽やかな風味が魅力。パリッとしたチョコの食感とふかふかのスポンジ生地が絶妙で、万人受けする味わい。また、バニラ味、チョコ味、イチゴ味のブッセも人気だ。いろいろと買いたくなるはず。
大普美
ダープーメイ
台北市中山區錦州街199號 02−2522−2354 7:30~22:30 無休 レモンケーキ42元。小豆ペーストを砂糖で固めた「紅豆丸」もおすすめ。

文/片倉真理 写真/片倉佳史
※この記事は、No. 145 2026年1月号「&Taipei」に掲載されたものです。
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台北在住ライター・コーディネーター 片倉 真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

