
ごく普通の会社員として働きながら、なぜ彼女は自らの資産を公開し、発信を続けるのか。銀行員を辞め、貯金40万円という状況から始まった資産形成の道のり、独自の投資ルール、そして「ストレスを溜めない」という彼女ならではの哲学。漠然とした将来への不安を「見える化」することで解消し、心の余裕を手に入れようとする個人投資家の酢束(すたば)さんに話を聞いた。
◆◆結婚式費用が準備できなくて資産形成を考えた
――まず、酢束さんの簡単なプロフィールと、投資を始めた時期について教えていただけますか?酢束さん:普段はごく普通の会社員をしている30歳です。投資を始めたのは2021年で、それまで銀行員として働いていて、窓口で積立NISAの口座開設をご案内していました。
でも、当時は資産運用にまったく興味がなくて、実は自分ではNISAをやっていなかったんです。でも、「それではお客さまへの説得力がないな」と思って、月1万円から積み立ててみたのが最初です。
――それから本格的に資産形成を考えるきっかけになったのは?
酢束さん:真剣に考え始めたのは、銀行を辞めてからですね。2021年に銀行員を辞めて次の職場も決まっていたものの、将来への不安が大きくなって……。
それまで好き放題使っていたので全然貯金がなくて、本当に40万円くらいしか貯金がなかったんです。
当時お付き合いしていた方との結婚を考えたときに、結婚式費用の200万円が用意できなくて……。「これは真剣に考えないといけないな」と思って、本格的に資産形成を始めました。
◆◆「同世代の人ってどれくらいお金を持っているんだろう?」

酢束さん:銀行を辞めた後、2021年10月からXの投稿を始めました。自分の将来の貯金について改めて考えた時期です。
当時、お金のことを誰にも相談できなかったんです。総資産が33万円くらいまで減ってしまったときもあって、「同い年の人たちってどれぐらい持ってるんだろう?」とか、そういう話ができる人がいなくて。
誰にも相談できないから、「もう聞いてほしい!」という思いで発信してみたのがきっかけです。
――始めた当初の反響はいかがでしたか?
酢束さん:最初は全然「いいね」も付かず、ゼロでした。でも、日記というか、レコーディングダイエットみたいな感覚で、総資産を1円単位で計算して載せていました。
しばらくした頃に「#株クラと繋がりたい」というハッシュタグがすごく流行った時期があって、そこで自己紹介をしたら一気に広まったんです。女性の投資家はあまりいなかったし、顔出しもしていたので珍しいと思っていただけたのか、一気に5000人くらいフォロワーが増えました。
急に注目されて、最初は身バレするかもと、正直少し怖くなりましたが……。私にとっては、貯金がないときに「現実から目をそらしてはいけない」という思いで、一番長く続けられていることかもしれません。
このスタイルを真似してくださる方も出てきたのですが、私以上に続いている方は見たことがないです。やっぱり、反応がないと続けるのは厳しいですよね。

