◆50社以上から落とされ、ニューヨークで得た仕事

幸いなことに「へたな鉄砲、数撃ちゃあたる」は信条であり、得意技でもあった。数十年前、日本社会ではまだ中途採用がほとんど浸透していなかった時代に日本のメディアを渡り歩き、職を得た。当時と同じ勢いで求人サイトを使ってアメリカの企業にバンバン応募した。50社ぐらいから袖にされたが、そのうち、世界的な観光関連企業グループから面接の知らせが届く。担当者との面談を繰り返して、なんとか採用にこぎつけたが、入社初日に「同期」となる10人の面々と顔を合わせて驚いた。半数以上は、日本企業の定年を過ぎた自分よりも年上・最高齢はなんと、75歳だったからだ。
◆アメリカには採用時の「年齢差別」が存在しない
決して高齢者を対象にした求人だったわけではなく、経験やキャリアを最優先に選んだ結果だったという。実際、配属先も裏方ではなく、フロントやコンシェルジュなど顧客サービスを担当する部署がほとんどだった。そもそもアメリカでは、履歴書に年齢を書き込む習慣がなく、面接で尋ねられることもない。年齢を基準に採用、不採用を決めるのは「差別」につながるという発想があるからだ。
日本では、企業が求人募集の際に年齢制限を設けることは、原則として法律で禁止されている。しかし、実態としては年齢を履歴書に記入させ、採用時にほぼ無条件に高齢者を弾き飛ばしている場合が多い。そういった意味でも、アメリカと日本との間には差がある。実力主義社会であるアメリカでは、「年齢差別」が存在しない。高齢者が平等に扱われ、新しい仕事に挑戦していることは、日本人はほとんど理解していない。

