
今年の夏は例年より暑く、昼間は庭仕事には向きません。それでも、朝の涼しい時間帯は本当に気持ち良く、目が覚めたら、まずは庭に出て過ごすのが習慣になっています。体内時計を整えるには、朝一番に自然光を浴びるのが良いそうで、朝食前はなるべくスマホを見ないようにしています。
朝食の後は、エスプレッソを片手に庭へ。前の晩に水やりを忘れていれば植物に軽く水をやり、そのまま30分ほど庭をオフィスにして作業をすることもあります。この時間帯は、とても集中できる貴重なひととき。植物に気を取られなければ、朝いっぱい作業に没頭できることもあります。

外仕事から帰ってきた夕方には、庭でお茶や冷たい麦茶を飲みながらくつろぎ、ビールを飲んでいい時間になるまでカウントダウン(笑)。ビールを飲むお気に入りの場所は、グミの木の下。春には甘い香りの花が咲き、ミツバチの羽音で満ちています。
リラックスしながらも、メールをチェックしたり、インスタグラムを眺めたり、夕飯のことを考えたり。ふと気になる植物が目に入ると、そのまま剪定や草取りを始めてしまうこともあります。

イギリスではテラスでの食事やバーベキューが一般的ですが、我が家は“フランス窓”を全開にして室内で食べるスタイル。外の涼しさを感じつつ、虫を避けられるので気に入っています。

夕暮れになると、空にアマツバメが舞い、夕日が羽の裏側を照らします。日が沈んだ後にはコウモリやハリネズミも姿を見せます。
夜の水やりも私の好きな仕事のひとつ。鉢植えや野菜にゆっくりと水をやりながら、海藻エキスを混ぜた液体肥料を与えることもあります。植物の様子をじっくり観察できる時間で、インゲン豆の初収穫時期が近いことにも最近気づきました。
庭にはご近所さんの生活音もほんのり届きます。誰かが水やりをしていたり、ガーデンチェアで語り合っていたり、開いた窓からテレビの音が流れてきたり……。そんな音に包まれながら過ごす夏の夜が、私はとても好きです。
この連載も今回で最終回です。4回にわたり、お付き合いいただき、ありがとうございました。今はイギリスを拠点にしている〈ニワキ〉ですが、日本でお店を持つことは、私自身ずっと大切にしてきた夢。まだ道の途中ですが、その日を思い描きながら少しずつ歩んでいます。
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edit:Sayuri Otobe
〈ニワキ〉ファウンダー ジェイク・ホブソン

ロンドンのスレード美術学校で彫刻を学んでいた際に来日し、日本の庭木文化に感銘を受ける。その後、大阪の植木職人のもとで経験を積み、2007年にガーデニングツールブランド〈ニワキ〉を創設。現在はイギリスと日本を拠点に、ガーデニングや暮らしにまつわる数百点の商品を展開し、オンラインを通して世界中へ届けている。

