◆「家族だから」の名の下で、人生を奪われる
![[子供部屋おばさん]絶望の日常](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2025/12/1766966476787_j6qxb62d31.jpg?maxwidth=800)
父親から嫌みを浴びせられるたび、石原和美さん(仮名・43歳)は、視線を落とし、言葉をのみ込む。彼女は現在、70代半ばの両親、“優秀な息子”とされるバツ2で出戻ってきた5歳下の弟と、その子供2人とともに秋田県の実家で暮らしている。
「高齢の両親や外で働く弟に代わり、家事全般は私の役目。ネット回線の手続きなど家の雑務はすべて私がやるのが当たり前になっています。さらに在宅で仕事をしているため、弟からは『姉ちゃんはずっと家にいられていいよね』と、甥や姪の面倒まで。でも、家族から感謝の言葉は一度たりともありません」
石原さんの家庭では、“家長を最優先する”価値観が疑問視されることなく受け継がれていたという。
「父と祖母が家長として振る舞う日常で、祖母からは『お前は肌が汚くて醜い』なんて罵られることが多かったですね。食卓にスイカが並んだ時に『お前は皮だけ食ってろ』と、赤い実の部分は父や弟だけにあてがわれたことも……」
◆唯一の希望の光はマッチングアプリから降り注いだ
そうした環境のなか、母とは、虐げられる者同士“戦友”のような関係になっていった。「私は幼い頃から母の愚痴の聞き役。母は『お金がない』が口癖だったので、高校時代の成績は学年で1位だったけど、進学したいと言えず、卒業後すぐに就職しました。ただ、そんな母も私が父や祖母から暴言を吐かれたときは、庇ってはくれませんでした」
逃げ出したい。若い頃は働きながら一人暮らしの準備をしていたという石原さんだが、22歳でうつ病を発症する。
「免許の更新ができなかったのもネックでした。田舎は自動車免許必須の求人がほとんどで、車を持たない高卒の女が自立するのは難しかった」
結果として、石原さんは20年以上、実家で幼少期に与えられた6畳の部屋に暮らす、子供部屋おばさんになったのだ。それでも、最近は「希望もある」と目を輝かせる。
「この夏、マッチングアプリで彼氏ができたんです。彼だけが私を『可愛いね』って褒めてくれる。王子様みたいな存在です」
彼と結婚して家を出ることが生きる縁(よすが)なのだと語った。

