◆管理を巡ってのトラブルにご注意
本来、個人的に訴えられた事案を管理組合の費用で負担するのはおかしな話です。しかし理事長が「管理組合の為に行ったことが発端なので、管理組合で負担する」と主張し、その議案を総会に付議してしまいました。もちろん総会の決議で反対する人が多ければ止めることは可能です。しかし、そのマンションでは管理に無関心な組合員が多く、結果、賛成多数になり可決されてしまいました。当時、理事会に参加していた私は「お互いマンションの所有者同士、まずは裁判沙汰にするのではなく、話し合いをして解決策を探っていきましょう」と提案していたのですが……。双方共に「正義は我にあり!」と思っているようで「お前はあいつの味方なのか?」とお互いから詰問され、理事会にも呼ばれなくなる始末。私はそんな状況に「本来、マンション管理や修繕に使うお金が裁判に使われる一方で、このままじゃ埒が明かない」と考え、この物件は売却しました。
さらにその後は、この副理事長だった人物から複数回の提訴がなされ、いずれも弁護士費用は管理組合が負担することになったようです。
◆管理費等が値上げされるのは当然の結果
マンション管理組合のお金は理事長、副理事長を含む各組合員から集めたものです。結局、この訴訟は自分で自分の懐を痛めつけているに過ぎません。元々このマンションでは管理費や修繕積立金にそれほど余裕はありませんでした。こんなトラブルに対してお金を使うと、昨今の物価高の影響もあり、そろそろ管理組合側の費用が尽きてくる頃でしょう。必要な修繕や管理が行われておらず、徴収する管理費や修繕積立金が値上げされているかもしれません。トラブルが発生しても感情的にならず粛々と対処していれば……。「かかってしまった裁判費用や弁護士費用は修繕や管理に充当できただろう。値上げもせずに済んだだろう」と思うと残念でなりません。
そもそも、タバコの煙や騒音などのトラブルを止めさせようとするのは大事なことでしょう。しかし「自分だけが正しい」「間違っている人には何をしてもいい」と考えるのは、気持ちはわかりますが最低最悪な思考です。少なくても冷静に損得を判断できる人間であれば、その愚かさがわかるはず。安易に自身だけの正義を振りかざすと、思いもよらぬしっぺ返しを食らうこともあるのでご注意を。
<構成/上野智(まてい社)>
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社)、『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

