◆◆「ギャンブル経験者の医師」が寄り添う、新しいサービスを
――そうしたご自身の経験と問題意識から、ギャンブル中毒を減らす取り組みを考えているのですね。清水:日本にも国の更生施設などはありますが、正直言って、そこで提供されるプログラムはギャンブル中毒者の心理をわかっていない「机上の空論」であることが多い。施設から帰る途中で競馬場に寄ってしまう人もいるくらいです。
また、ギャンブル中毒を治そうと思っても、ギャンブルをやったことのないお医者さんやカウンセラーに「やめなさい」と言われても、当事者からすれば「やったこともないヤツに言われたくない」と思ってしまうんですね。
だからこそ私たちは、ギャンブルを知り尽くした人がアドバイスをする、本当に寄り添ったサービスや仕組みが必要だと思っています。
――具体的には?
清水:まず、専門の精神科医が面談を行いますが、その医師は必ずギャンブルの経験者です(笑)。そして、海外で効果が実証されている先進的なプログラムを研究し、日本人に合う形で提供する。
アプリなどで日々の管理をしながら根本的な改善を目指す、ライザップの“ギャンブル版”のようなイメージでしょうか。
ギャンブルをただ禁止するだけでは意味がありません。おもちゃを取り上げられた子供は違う遊びを見つけるように、根本から学び、改善していくアプローチが不可欠だと考えています。
――医療的なアプローチだけではないのですね。
清水:はい。ギャンブル中毒って、収入が上がれば解決することも多いんですよ。ですから、私たちが持つ人脈を活かして、AI領域などこれから稼げる分野への転職やリスキリングの支援も必要だなと思います。
また、ギャンブルをやっている人は、多額の借金を抱えているケースもあります。借金を返すために、またギャンブルを繰り返す……。場合によっては、債務整理の専門家につなぐことも必要でしょうね。
頭ごなしに「やめろ」と言うのではなく、ギャンブルの「勝ち方」を教え、リスク管理を学ぶ。すべてを取り上げるのではなく、うまく付き合いながら、楽しんでいく方法を一緒に探していく必要があると思っています。
私は、ギャンブルはゼロにする必要はないと考えています。正しく遊べば、ギャンブルは決して「やってはいけない事」ではなく、正しい遊び方、適切な遊び方が大事だと思いますね。
――まさに、ご自身の経験のすべてが詰まった事業ですね。
清水:日本には今、ギャンブル中毒者が700万人から800万人いると推計されています。そのうち、少なくとも200万人から300万人は、「やめられるならやめたい」と悩んでいるはず。この方たちがギャンブルで失う金額をたとえ半分にでもできたら、その人の人生にとっても、日本社会にとっても、計り知れないプラスになります。
このようなサービスや仕組みは、本当にギャンブルで負け続けた私だからこそ語れる、私にしかできないものだと信じています。この社会的な意義を持つ事業で、もう一度、上場を目指したい、それが今の私の夢です。
【プロフィール】清水 望

YouTubeチャンネル「ラスワンのギャンブル魂〜復活編〜」
<取材・構成/三枝祐介 撮影/大倉裕一>

