2025年はクマの出没情報や人的被害が増加し、過去最多の13人が犠牲となった。クマ被害は連日のように報じられ、「今年の漢字」でも「熊」が選ばれた。同時に問題となったのは、行政機関への意見や苦情だ。特に被害数の多い秋田県では、1か月で700件を超える問い合わせが県庁に寄せられたという。
クマ被害のあった市町村に話を聞くと、「応援していますよ」といった声が寄せられた一方で、死亡事故が起きていても「クマがいる場所に人が行ってるんだから人が死ねばいいんだ」といった声が寄せられていることがわかった。

羅臼岳の死亡の際は100件以上の問い合わせが
昨年頃から、クマによる被害や駆除が報じられると、「なぜクマを殺すのか」といった趣旨の意見が散見される。
秋田県の鈴木健太知事は12月2日の県議会で、10月中旬からの1か月間で700件を超える電話やメールがあり、その半数以上が「捕獲等に対する県外からの批判的な意見」だと明らかにした。
さらに、こういった県外からのクレームは、クマに関する問い合わせに限らず年間を通して寄せられるとも明かした。また、鈴木知事はクマ対策を担当する自然保護課の電話複数台に録音装置を設置し、職員の負担軽減に努める予定だともした。
これまでクマ被害のあった市町村には、どのような意見がどの程度寄せられているのだろうか。
大きな注目を集めたクマ被害の1つが、8月14日に北海道斜里町内・羅臼岳で発生した登山をしていた20代男性の死亡事故だ。調査をした知床財団の発表によると、14日に同行者から通報があり、捜索を開始。翌15日に被害者の遺体に接触している親子のヒグマ3頭(母グマ1頭、子グマ2頭)を発見し、同日に3頭とも銃により補殺した。のちに、DNA分析により被害者を襲ったのはこの母グマとみられることがわかった。
この事故は事故が起きた14日から大きく報じられ、注目を集めた。翌15日には、羅臼岳周辺の閉鎖決定、被害者のものとみられる財布の発見、親子グマの捕殺など事態が進展するごとに報道各社でニュース記事が配信された。
J-CASTニュースの取材に応じた斜里町の環境課の担当者によると、8月中に町とヒグマ関連の業務を委託している知床財団に寄せられたものも合わせて、「100件以上」の電話での問い合わせがあったという。
問い合わせの中には、「なんでクマを殺すんだ」「クマがいる場所に人が行ってるんだから人が死ねばいいんだ」といったクマの捕殺に否定的な声も寄せられた。「かなり感情的になって、ひたすら怒鳴り続けるような方もいました」という。問い合わせの半分以上がこうした否定的な声だったという。
一方で、「あなたたちがやっていることは間違いないよ、自信持ってください」「いろんな声があるけれども応援していますよ」といった声も多く寄せられたと話す。
件数は減ったものの「駆除反対派」の割合が大きく
10月16日に岩手県北上市の温泉旅館で従業員の男性がツキノワグマに襲われて死亡した事故も、大きく報じられたクマ被害の1つだ。報道によると、男性は16日、露天風呂の清掃中に行方不明になり、翌17日に雑木林で遺体が発見された。同日に近くにいたツキノワグマ1頭を駆除し、後にDNA分析によりこのクマが被害者を襲ったクマだと断定された。この事故で亡くなったのはプロレスのレフェリーを務めていた笹崎勝巳さんだったと報じられたことも注目を集めた。
北上市ではこのほかに2件、クマによる死亡事故が発生している。1件目は7月4日に80代の女性が亡くなった事故だ。11日にクマが駆除され、後にDNA分析によりこのクマが女性を襲ったクマだと断定された。
2件目は、10月8日にキノコ狩りに出かけた男性がクマに襲われ死亡した事故だ。なお北上市は、事故現場から採取した毛からツキノワグマと判明したものの、サンプルの量や質が十分ではなく、17日に駆除したクマと同一個体かどうかは不明だとしている。
市農業振興課の担当者はJ-CASTニュースの取材に、7月の事故が起きた際には、電話で20件ほどの問い合わせが寄せられたほか、メールでも意見があったという。約7割がクマの駆除に賛成、約3割が自然保護の観点から駆除に反対するという意見だったという。
一方10月は、詳細な件数は把握していないものの、7月ほど問い合わせは寄せられなかったという。しかし、駆除に賛成する意見よりも「『なぜ駆除するんだ』というような意見が目立ちました」と明かした。こうした意見を寄せる人は「ほとんどが県外の方」だとし、「長い方はもう30分以上、1時間近く」話をすることもあったという。