◆景色の良い窓側席を狙う外国人観光客との攻防

「1か月以上前に2人掛けの窓側が良くて選んだ座席です。しかし席に向かうと、そこには外国人観光客の女性2人が並んでいました」
小澤さんが予約画面をスマホで見せると、2人はおとなしく自分たちの席へと戻っていった。一件落着かと思いきや、トイレから戻るとまた同じ光景が。
「再び同じ2人が私の席に座り、窓にスマホを向けて景色を撮っていたんです。近くに立ち止まると、元の席へ戻っていきました。テーブルは勝手に畳まれ、置いていたペットボトルは前のネットに押し込まれていました……」
小澤さんが唖然としていると、外国人観光客の1人が「チェンジ、チェンジ!」と笑顔で座席交換を求めてきた。しかし、わざわざ選んだ席。小澤さんは軽く首を横に振り、断った。
◆「もう二度と席は離れない」
新神戸駅を過ぎたあたり、小澤さんはデッキで休憩することにした。しかし、戻るとあの2人が自分の席に座っていた。「私に気づくと、さっと席を移動したのですが、掛けていたコートが座席に落ちてその上に座ったようでシワシワになっていました」
「もう二度と席は離れない」と決意したが、また仕事の電話が入る。デッキで対応している間にも、2人は再び席を移動していた。小澤さんは車掌に事情を説明し、直接声をかけてもらうことに。
「彼女たちが自分の席に戻ったのを確認してから私が席に戻ると、『ソーリー』と声をかけてきました。ようやく伝わったのかと思いましたが……」
広島駅を発車してしばらくすると、再び会社から着信が。デッキで電話対応を終えて戻ると、またしても2人が座っていた。今度は小澤さんの顔を見るなり、すぐに自席へ戻っていったという。もう何度目なのか……。
小澤さんの長期休暇は、こうして予想外の“座席攻防戦”で始まったのだった。
公共の場ではお互いにマナーやルールを守る意識が必要不可欠。周囲への配慮を忘れずにいたい。外国人観光客への対応に関しては社会として課題が残されているものの、何かあれば近くの駅員に伝えるのがいちばんだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

