◆家族で暮らしても少額で済む生活費
——一家3人で1か月の生活費はいくらぐらいになりますか?田村:息子が小学生になり、今後は変動があると思いますが、現時点で6万円ほどになります。車のガソリン代、スマホ代、肉や豆腐などの食費、温泉、たまの外食などが主な出費となります。現金を使う以外に、周囲の人たちとの物々交換も活用しています。

◆「自分にとっての幸せ」とは何か
——里山で自給自足の生活を送ることで、他の人とは異なる価値観、人生観を培われたと思います。都会で便利さを享受しながらも、どこか窮屈な思いをしている多くの人に、何かアドバイスはありますか?田村:未知の土地に移住すると決めたとき、それまでの自分の価値観を持ち込まないようにしました。ゼロの状態から、自分自身も変わっていきたいという思いが強かったですね。
今の日本では多くの人が、一生懸命に働いてお金は増えても、幸せには一向に近づかない。これは、ちょっとおかしいと思う人もいらっしゃるでしょう。お金よりもまず、自分にとっての幸せは何か、なんのために働くのか、原点回帰して考える必要があると思います。例えば家族の平和な日常のために働く、子どもをきちんと育てるために働くなど、具体的に働く意味を考えることが大切です。
何かを買うときも、本当に買う必要はあるのだろうか、家に既にあるもので代用できないだろうかと、いったん立ち止まって考えてみるのもいいでしょう。実は、そんなにお金を使わなくても済むことがあるとわかれば、支出が下がって余計に働かなくてよくなるし、家族と楽しく暮らす時間もできますよね。
外に出て忙しく働いている方ほど、自分自身を取り戻すという考えとその時間が増えたら、人生は変わるかと思います。
取材・文/鈴木拓也
田村ゆにさん
1987年、北海道札幌市生まれ。高校卒業後に上京し、アルバイトをしながら歌手を目指す。2016年、SNSで見つけた田村余一さんの「お嫁さん募集」へエントリー。2017年に結婚し、オフグリッド生活をスタート。2018年に第一子を出産。子育てや畑しごとのかたわら、SNSで暮らしの知恵や野菜の知識などを発信している。著書に『わたしを幸せにする0円生活』(幻冬舎)がある。
X:@uchimill_yome
【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

