80代オーナーの不動産、修繕費が支払えず資産価値がガタ落ち
不動産賃貸事業において「修繕費が払えないために修繕できない」「設備更新ができない」という状況が生じると、不動産の価値が低下してしまい、家賃が減る、空室が増えるという事態が生じます。得た家賃を事業維持のために使えず、不動産賃貸事業に危機を招くことにもつながります。
かつて筆者が相談を受けた事例では、以下のようなことがありました。
賃貸オーナーAさん(82歳)は、認知症が進行して、判断能力が大きく低下してしまいました。そのため、Aさんの長男が修繕費の払い出しで、Aさんに代わって銀行預金を引き出せるようにしたいと、Aさんの預金口座がある銀行に相談しましたが、銀行はAさんの意思確認が取れないため、Aさんの長男がAさんを代理して修繕資金を業者に送金する手続きを受け付けられないというのです。
必要な資金が支払えず、Aさんが所有する賃貸不動産を修繕できずにいたところ、雨漏り・設備不良・壁のひび割れなど物件の劣化が進行。入居者からの苦情が増えて退去が相次ぎ、Aさんの家賃収入は急激に減少してしまいました。
Aさんの認知症が、資産の移動を「止めて」しまい、Aさんの不動産賃貸事業を衰退させることになってしまったのです。
資産を「使える状態で守る」仕組みが必要
資産が止まる原因は、資産所有者の取引の相手が「資産所有者本人の意思確認ができない」からです。なぜなら民法に、意思能力のない人が行った法律行為は無効になると定められているからです。
では、認知症への備えはどうしたらよいのでしょうか? それは「資産の所有者が元気なうちに、本人に代わって本人のために資産を動かせる仕組み」を作ればよいということになります。
その仕組みのひとつが「家族信託」です。以下に、家族信託をどのように使うとよいのか、3つの使い方を紹介します。
また、資産を動かす仕組みは家族信託以外にもあり、本人の財産の所有状況によって、必要な仕組みを検討していただけたらと思います。
