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「『ハーフ』という言葉が使えなくなり『終わった』と思った」デニス植野が語る、テレビの“配慮”に翻弄された15年

「『ハーフ』という言葉が使えなくなり『終わった』と思った」デニス植野が語る、テレビの“配慮”に翻弄された15年

◆「ハーフ」という言葉が使えなくなった今のテレビ

ーー潮目が変わってきたと感じるようになったのはいつ頃ですか?

植野:徐々にですね。人間急な下り坂は気づけても、安定した下り坂は見えにくい。気づけばテレビの仕事が少しずつ減っていき、代わりに吉本の劇場や営業の仕事が増えていきました。忘れもしないのは、6年目(’17年)に「しくじり先生」(テレビ朝日系列)に呼ばれたこと。芸歴6年目で「しくじった」という域に入るのはよく考えると訳がわからないんですが、自分はもう「過去の人」という扱いになっているんだな、とは思いました。

ーー昨今では、外国人の参政権や日本国籍取得などに関する話題がニュースで積極的に取り上げるようになりました。外国人顔なので職務質問を受けてしまったことを題材にしていたり、外車を外国人に例えたりするデニスのネタは、聞きながらハッとする部分がある。その一方、今のテレビではこうした題材自体が「きわどい」と捉えられてしまうようにも感じます。

植野:そうですね。今は「ハーフ=半分」というネガティブなイメージを与えるという理由で、この言葉自体を使えなかったり、「ダブル」といった言い方に変えたりする局が多いです。

自身が黒人ルーツだったり、外人顔で職務質問を受けたといったネタも「当人がネタにする分にはいいが、笑っている側が差別しているように見える」という理由で、オーディション番組では通りにくくなっています。ハーフ芸人として積み重ねてきたことがことごとく「デリケート」の域に押し込められるようになって、そこ一本でやって来た身としては「終わった」と感じたこともありました。

ーーSNSで外国人バッシングも盛んな今、「ハーフ」という属性を前に押し出すことは別の怖さもあるように思います。

植野:たまにXで「日本から出ていけ」というメンションをもらうこともありますが、全体とすればたいしたことないですね。世間から何か言われる前に自分自身を自虐しているので、ターゲットにもなりにくいのかなと思っています。

◆芸人である以上は「いじってほしい」

心霊YouTuberらしい表情も見せてくれた
ーー「終わった」と言いつつ、最近では心霊チャンネル(『デニスの怖いYouTube』)の登録者数が40万人を越える人気ぶりです。

植野:今は、YouTubeから入ってデニスを応援してくれる方がむしろ多いですね。心霊YouTubeも「亡くなった方がいる場所でふざけるのは不謹慎」という理由で炎上しやすいジャンルなんですけど、僕らの番組は、「芸人として売れるために霊をつける」と断りを入れている。それで今のところは炎上もせず、むしろ応援してもらえる状況が作れています。

ーー今後は、YouTubeに力を入れて行かれるんですか?

植野:(きっぱりと)いや、芸人として売れたいです。そもそもYouTubeも「芸人として売れるため」という目的で始めたもの。’25年に女優の比嘉梨乃さんと結婚して家庭を持ったことで、改めて「頑張りたい」という気持ちも強くなりました。昔は何かあると「あいつのせい」「吉本のせい」と人のせいにしていましたが、つべこべ言わずにもう頑張るしかないと思っています。

ーー最後に、今も「ハーフ」であることをいじってほしい気持ちはありますか?

植野:芸人である以上、それはいじってくれと思いますよ。こちらは20年間以上「カレーが似合う顔だね」とか言われて、「いや父はブラジル人だけど母親は日本人で……」みたいな事情をひたすら説明しながら生きてきたんですから。2~3年売れたと思ったら、急に「臭い物にフタ」みたいな扱いを受けるのも割に合わないな、と。まあハーフ芸人という存在自体はテレビを一周したので、今後は人柄も含めて自分自身を見てもらえるなら、それが一番ですね。

「ハーフ芸人」たちがバラエティ番組で活躍していたのは、わずか10年前のこと。話を聞きながら、短期間でこうも急激にテレビは変わったのかと改めて驚かされた。さまざまなルーツを持った人々が国内に増えるいま、過度な配慮を抜きに「ハーフ」漫談が楽しめるようになることを願っている。

(取材・構成=松岡瑛理 撮影=長谷川唯)

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
配信元: 日刊SPA!

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