スマートフォンで位置を特定できる「紛失防止タグ」の悪用に対する規制などの内容が新たに盛り込まれた改正ストーカー規制法が、12月30日から施行される。
また、これまで警察は被害者の申告がなければ加害者に警告を出せなかったところ、改正法では警察の職権で警告を出すことが可能になる。
「警察の職権による警告」制度が新たに創出
従来のストーカー規制法でも、GPSなど、衛星を介し自らの位置情報を記録して送信する装置は規制対象に含まれていた。
一方、AppleのAirTag(エアタグ)に代表されるような紛失防止タグは衛星ではなくサーバーを介した情報を利用する装置であるため、エアタグを悪用する行為は、これまではストーカー規制法上の「位置情報無承諾等」に該当しなかった(同法3条)。
しかし、今回の改正で、紛失防止タグを悪用する行為も規制対象に。具体的には、「紛失防止タグで被害者の位置情報を取得する行為」および「紛失防止タグを被害者に取り付ける行為等」が規制される(2条3項)。
また、従来の法律では、警察は被害者からの申告があって初めて、加害者に警告(※)を行うことができた。しかし、加害者からの報復をおそれた被害者が申告をためらうケースがあることが問題視されていた。
※警察が加害者に対し、行為がストーカー規制法に違反するおそれがあることを正式に伝え、中止を求める行政上の措置。後述の禁止命令とは異なり、警告自体に罰則はないが、従わない場合には禁止命令の発出につながる。
改正法ではこうした事態を防ぐため「職権での警告」が創設される(4条)。被害者の申告がなくても、警察が事案の重大性を判断して迅速に対応することが可能になる。
くわえて、警告と同様に禁止命令(※)についても、公安委員会の職権で行うことが可能に(5条)。
※ストーカー行為をするおそれが高いと認められる加害者に対し、つきまとい行為や連絡、待ち伏せなどを一定期間禁止する行政上の措置。禁止命令に違反してストーカー行為を続けた場合の罰則は、通常のストーカー行為(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)より重く(18条)、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金とされている(19条)。
さらに、これまでストーカー加害者に対する禁止命令を出せるのは、加害者の住所地を管轄する公安委員会のみであったが、改正により、被害者の住居所在地を管轄する公安委員会も禁止命令を出すことが可能になった(14条)。
学校・職場も「ストーカー被害者支援」の主体に
従来の法律では、ストーカー行為等が行われている地域の住民が「被害者支援に係る努力義務の主体」として規定されていた。
そして今回の改正により、ストーカー被害者の勤務先や就学先の責任者(企業の雇用者や学校長など)も「努力義務の主体」に追加される。ストーカー被害者が「職場や学校で支援を受けたい」と求めることが法律的に可能になった(9条3項)。
上記はいずれも12月30日から施行される。
そして、2026年3月10日からは、探偵業者をはじめとする第三者から被害者の所在等に関する情報を加害者が入手してストーカー行為をする、というケースに対処するための内容も施行される(6条)。
具体的には、警察本部長等は、ストーカー行為等の被害者に関係する情報を提供する可能性がある者(探偵など)に対し、情報提供先(探偵の依頼者など)はストーカー行為等をするおそれがある者であることを通知して、情報提供を行わないよう求めることが可能になる。

