家族関係を壊さず、老後を守るために
では、どうすればよいのでしょうか。大切なのは、我慢でも拒絶でもなく、線引きです。
まず1つ目は、家計の見える化です。週末にかかっている追加費用を、食費、光熱費、レジャー費として書き出してみてください。佐藤さん夫婦の場合、数字を整理したことで初めて危機感を共有できました。
2つ目は、ルールを決めること。「外食は月1回まで」「おやつは持参してもらう」「夕食は簡単なもので許してもらう」こうした小さな取り決めでも、支出は大きく変わります。
3つ目は、息子夫婦との対話です。家計簿をみせながら、現実を共有することは決して恥ではありません。老後資金は有限であり、それを守ることは家族全体の安心につながります。
佐藤さんが意を決して現状を伝えると、息子さんは驚き、こう答えました。「いってくれてよかった」以来、訪問時には食材を持参するようになりました。
孫は、人生の喜びです。しかし、老後の安心を犠牲にしてまで背負うものではありません。愛情と家計、その両方を守るために必要なのは、勇気ある一言と、冷静な数字です。老後破綻は、静かに始まります。だからこそ、気づいたいまが、立て直しの最初の一歩なのです。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
