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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.105 ブング・ジャムの2025年べストバイ文具 その3

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.105 ブング・ジャムの2025年べストバイ文具 その3



文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんに2025年ベストバイ文具を紹介してもらいました。

第3回目は、他故さんのベストバイの「ぺんてる製図用シャープペンシル発売60周年記念限定モデル」です。
(写真左からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2025年11月7日撮影
*鼎談は2025年11月29日にリモートで行われました。



ぺんてる製図用シャープペン60年の歩みが分かる

1.jpg「ぺんてる製図用シャープペンシル発売60周年記念限定モデル」*関連記事



――最後は、他故さんお願いします。

【他故】お2人は今年の新製品だったわけですけども、僕が今回語るのは新製品だけども、中身は別に新しいプロダクトではないというものになります。

【きだて】おっ、なんだろ。

【他故】ぺんてるが製図用シャーペンシル60周年記念ということで、現状売っている製図用シャープペンシルを改めて黒染めにしたものを作った上で、バラで売ってるものと箱に入ってセットで売ってるものっていう2種類の売り方をしたんですけども。これが出た時に、絶対にセットで欲しいってずっと思っていて、買えて良かった。最初のうちに争奪戦になるかもしれないと思って、すごい頑張って買ったんですけど、今見てみるとどうやら高過ぎてあんまり売れてないみたいで。

【きだて】それセットでいくらだっけ?

【他故】5,000円ぐらいかな。

――税込で4,950円ですね。

【高畑】「グラフ1000フォープロ」が2,000円で、「グラフギア500」が1,000円みたいに軒並み倍ぐらいの値段になってる。

【他故】「グラフギア1000」が倍になってるっていうすごい状態なんだけども。

――「グラフギア2000」じゃないかって話ですね(笑)。

【他故】そうそう。「フォープロ」も1,650円なので、1.5倍になってるし。

【高畑】まあ高いんだけどね。

【他故】それもそうなんですけども、とにかくこれのキモっていうのは、本体が黒染めになってるとか、そういうことじゃなくって、中に入っているこの60周年のぺんてるの歴史なんですよ。

3.jpg【きだて】はいはいはい、

【他故】これがとにかく最高級のキモ。ぺんてるは割とこういう表を作るの好きで、例えばお店で歴史的な現物を並べて、「こういう歴史があります」みたいな展示をすることがあるんだけど、表そのものが手に入るっていうのはなかなかなかったと思う。製図用シャープだけを切り抜いた歴史っていうのは、Webでも上げてなかったんじゃないかな。

【きだて】見た記憶はないね。

【他故】ぺんてるの歴史のページってたくさんあって、いろんなものが並んではいるんだけども、今回のこれが最高級の資料になるんですよ。今ぺんてるが理解している製図用シャープペンシルの歴史が全部これで分かるっていう。

【高畑】ぺんてるのシャーペンのね。

【他故】うん。ぺんてるが60年前に「グラフペンシル」を出した時から、どんな製図用シャープが出たかが一覧になってる。これがとにかく欲しくて。で買って初めて気が付いたんですけど、裏には英字で書いてある同じのが載っていて、英語でも分かるよみたいな、外国の方にもすごく親切みたいな作りになってるんですけど。僕は資料を紐解いて一生懸命調べる人ではないので、こういうのがまとまってると嬉しいんですよ。

【高畑】一生懸命調べる人も、まとまってると嬉しいよ(笑)。

【他故】僕自身がこういう歴史に興味はあるんだけども、個人で調べるには限界があるなって常に思っていたり、メーカーのホームページを見てもあんまりちゃんと書いてないなと不満に思ってたことがすごく多かった中で、今回ぺんてるが満を持して自分の製図用シャープペンシルが全部一覧になったものを作ってくれた。正直に言えばこの紙に5,000円出してるような気がするくらい。

4.jpg【高畑】でも気持ちは分かる。

【他故】とにかくこれが欲しかった。セットじゃないと買わないみたいな。中のペンはみんな普通のやつは持ってるし。

【高畑】カッコいいっちゃカッコいいんだけどさ、とは思うけど。でも、5,000円かって言われたら、「まあ」って思うちゃう。

【他故】まあまあ高くなっちゃったな。ただ、中のペンも確かにかたちは変わってないけど、黒染めのカッコよさっていうのは間違いなくあるなと思ってるので。「グラフギア1000」が真っ黒って初めてじゃないかな。

【高畑】ああ、そうだね。

【他故】そもそもこれって、普通に売ってるのは銀色のペンじゃないですか。真っ黒になって、このかたちが初めて好きになった。あの銀色がホント気に入らなくて(苦笑)。

【高畑】分かる!特に、グリップの中から出てるゴムのかたちが、銀色だと目立って嫌なんだよね。

【きだて】ああ、そこは分かるな。

【他故】自分にとって製図用ペンのベースになってるのは、やっぱり「グラフ1000フォープロ」だから。この黒がずっと好きで、高校、大学と愛用してたってことがあるので、「グラフギア1000」が銀色で出てきた時に、俺の好みではないってずっと思っていた。今回値段は倍なんだけど、黒染めになったことによって、やっぱり黒っていいよねっていう風に改めて思ったんですよ。

【高畑】結構いいよね。

【他故】「500」も好きなんだけど。

【高畑】「500」の黒もいいよね。

【他故】「500」の真っ黒も多分初めてかな。

【きだて】黒は出てなかったんだね。

【他故】そう。割と色替えをたくさんしてたと思うんだけど、真っ黒はなかったと思うんだよね。大抵どっかに銀が入ってるみたいなかたちばっかりだったのが、真っ黒になって好みのものになったなっていう。そのことも含めて、このセットはとりあえず使わずに保存用ということで買ってるんですよね。だから、本体をしまった状態で入れてる。

【きだて】まあ、今更使うまでもないわな。

【他故】でも、やっぱり使いたいなと思うことがあるといけないので、もう1セット買ってですね、こっちはいつでも使えるようにスタンバイしてある。

【きだて】あれ? 保存用と使う用だな。

【他故】これはさすがに保存用が欲しかった。

【高畑】ああ、何か分からなくもないな。それで面白いなって思うのは、歴史がずらっとある中でその3本だったんだね。でもここには「グラフペンシル」が入ってないんだよね。

【他故】そう、1番最初のかたちに1番近くて、現状まだ売っている「グラフペンシル」が今回はこの中に入ってないんだよね。

5.jpg【高畑】そうなんだよね。むしろGPが入っててもいいなっていう気もちょっとするね。

【きだて】周年記念なんだからさ。「グラフペンシル」でいいと思うんだけどね。

【他故】4本入ってたって良かった。

【高畑】GPの真っ黒を見てみたい気もするし。同じメーカーの同じ製図用シャープって言っていながら、この3本は性格が全然違うのが面白い。

【他故】そうそう、違うんだよね。

【高畑】軽くて超低重心な「グラフギア500」と、あと「グラフ1000フォープロ」がちょうどど真ん中にあって、重心バランス的にはちょっと後ろ寄りになってる「グラフギア1000」があって、その違いで持ち心地を楽しめるっていう、何か利き酒セットみたいなとこがちょっとある。

2.jpg【他故】ははは(笑)。そうそう。

【高畑】利きペンセットなんだよね。

【他故】「グラフギア1000」だけが、ちょっと進化系から外れた当時の流行りが入ってる感じもあるんだよね。バインダークリップになってるとか。

【きだて】そうそう。

【他故】これだけがダブルノックになってるとか、ダブルノックをクリップで戻すとか、結構違いがあるところも面白いんだよね。

【高畑】製図用シャーペンとしてはそれだけがギミックがいっぱいあって、ちょっと過剰かなって気もするんだけど。そのペンは、海外のイラスト描いてる人の人気がめちゃくちゃ高いんだよ。

【きだて】あ、そうなんだ。

【高畑】インスタとか見てると海外の人で「グラフギア1000」使ってるアーティストが案外多くて、結構それで書いてるんだよね。

【他故】そうそう。このグリップが特徴的だから、見ると分かるんだよね。

【高畑】分かる。割と好きな人もいるから、それはそれで人気なんだなと思うし。だからこそ、これとあともっと軽い「グラフペンシル」が入ると、シャーペンの持ち心地較べのセットとしては非常にいいなと思って。だから、歴史をたどりながらそれを使ってみるセットとしてはいいかな。いや、GP入れてくれよって。それこそ、最初のやつがあると歴史が分かるじゃん。

【他故】それは分かる。本当にこれ「グラフペンシル」入っててくれたら最高だったなっていうのはすごく感じるね。

【高畑】うん。まあ、あえてそこは「スマッシュ」じゃないっていうところもいいよね。「スマッシュ」は製図用シャープじゃないからね。そこは何かいいね。

【他故】ぺんてるといえば、シャープペンシルのメーカーとしては、国内ではおそらく最高なメーカーだと思ってるんですよ。出てくる製品はみんな高性能で、今シャープペンシルを使ってる中高生も、やっぱりぺんてるのシャープって、多分性能で選んでるだろうなあ。そういう意味での人気もあったので、この歴史が付いているっていうのは、若い人にもこんな歴史があるんだなっていうのが分かってもらえてすごくいいなと思うんだよね。

【きだて】うん。

【他故】でも、これを見て「じゃあなんでメカニカ復刻しねえんだよ」とか言うやつが絶対出てくると思う。「もっと前のやつが欲しいんだよ」みたいな(笑)。

【きだて】まあ、そういうのも出てくるけどさ。

【高畑】でもその説明書の表紙が「メカニカ」のパッケージっぽいんだよ。

6.jpg【他故】あーそうそう。

【高畑】そこオマージュなんだよ、一応。

【きだて】そういうことなのかそれ。

【他故】グリッドになってるやつ。

【高畑】「メカニカ」のパッケージの、あのプラスチックのケースの上にこの模様が入ってたんだよね。

【きだて】色々と芸が細かいね。

【他故】やっぱり、ぺんてるファンに対して失礼がないようにというか、ちゃんと分かってもらえるようにやってるなっていうのはすごく感じる。

【きだて】ぺんてるの製図用シャーペンなんて、男の子が中・高のうちのどこかで必ず一度は通り過ぎるものじゃん。

【他故】絶対好きになるよね。

【きだて】そう思うと、60年の歴史というのも割と価値があって面白いね。

【高畑】だって、樹脂芯を作ったのがぺんてるだからさ。ぺんてるがシャーペン作ってなかったら、もう本当に今の世界のシャーペンがないわけだから。

【他故】全くその通り。

【高畑】その年表に載ってるやつって、その前に「ぺんてる鉛筆」とかあるけど、かなり初期の段階で製図用シャープのGP作ってるでしょ。

【他故】そうね。65年にはもうすでに0.5㎜でも作ってるわけだからね。

【高畑】60年に芯が出て、65年にはGPだからぺんてるはかなり早くから製図用シャープをずっと作ってるものね。

【他故】芯ができたことによって、細く書けるという製図家の需要みたいなものに応えられるようになって、じゃあ本体もちゃんと作ろうということになった。恐らく、日本で最初の方だと思うんだけど。

【高畑】間違いない。

【他故】その歴史もすごいなと思う。ただ、これバラで売ってるのって、どれが一番売れてるんだろうな。よく什器見てるんだけど、割と「グラフ1000」が売れてるみたい。

【高畑】売れてるよね。

【他故】でも、「グラフ1000」の0.5って、ほぼ今売ってるやつと同じなんだよね。どこが違うんだ?ぐらい。

【高畑】そうだよね。

【他故】ノックノブの輪っかが1個、確か茶色なんだっけ?

【高畑】そうそう、そこを黒くしただけっていうね。

【他故】それで500円高くなるんだ、みたいな。

【高畑】買うなら「500」か「グラフギア」だろうって思うんだけどね。

【他故】ただ、この茶色って芯径の表示色だっけ?

【高畑】芯の太さによってそこの色を変えてるんだよね。メーカーとかブランドによってその色が違うんだけど、何㎜が何色みたいに分けてあるんだよね。

【他故】それが黒になっただけでも確かにかっこいいわな。全身黒ってこれしかないので。

【高畑】今回は0.5しか出してないじゃない。今回のこの記念セットは、そもそも芯径をいっぱい出す必要がないモデルだから、全部黒でいいよねっていう話だよね。

【他故】そうそう。その辺も面白いなと思って。なので、シャープペンシルが好きだって言っているキッズには、セットは高過ぎるかもしれないけど、とにかくこいつがキモなので、これを手に入れてほしいっていうのがあるんだけど。

【きだて】どうだろう。今キッズは、5,000円のを買わないかね。

【高畑】まあ、5,000円ぐらいだったら、普通に買っちゃうかもしれないね。

【他故】買ってる子は買ってるかもしれないけどね。

【きだて】だから、俺も本当に瞬殺だと思ってたんだよ、そのセットは。

【高畑】だって、今ラダイトだって普通に1本5,000円、6,000円だし。紀寺商事だって6,000円ぐらいするじゃない。むしろ、紀寺の「リフト」がまだ手に入らないんだけど。

【他故】ああ、あれもないか。

【高畑】全然手に入らないんだけど。今プレ値がついてるのしか見たことがなくて。普通の値段で2,000いくらなんだけど、4,000円とか5,000円とかで今ネットで出てて。いやいや、そういう値段で買うものじゃないよって思いながら。

【他故】それは分かる。

【高畑】あとカーユプラスなんて7,000円ぐらいじゃないそれを考えたら、5,000円だったら全然アリなんじゃない。

【他故】シャープペンシルもみんな高くなっちゃったなとは思うけど。でもまあ、好きな人が買う値段だとしたら、おそらく2,000円、3,000円はもう普通のゾーンなんだろうな。

【きだて】大分趣味性の強いジャンルになっちゃってるんで、全然いいとは思うし。俺は、使う用・保存用じゃないけど、保存用に1セットは買っといてもいいのかなというのは思うよね。

【高畑】そうだね。

【きだて】と言いつつ、俺はまだ買ってないんですけども。

【他故】これは全然急がなくても、いろんなところで売ってるんで。

【きだて】うん。

【他故】自分にとってのベストバイって何だろうな?って今回ずっと考えてたんだけど、本当に欲しくって、慌てて買ったのはーこれぐらいなんですよ。店頭にないっていって探しまくったペンは別にもあるんだけど、でもそうじゃなくって、買う前の段階で「絶対手に入れなきゃ」って言って慌てて買ったのはこれだけだったので。

【高畑】まあ、歴史を買った感じではあるよね。

【他故】そうそう。なので、僕のベストバイは、ぺんてるの歴史が載ってるからこそのこのセットっていう感じですね。

【高畑】なるほどね。何か3者それぞれが、製品そのものに対して100%何か満足ではないところがちょっとね。オタクのちょっと斜めなところが出てしまったかな。

【他故】出ちゃうね。

【きだて】まあしょうがない。面倒くさいおじさんたちだから(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】まあでも、それぞれ何かいいなと思いますよ。

【きだて】3者3様で、納得のチョイスではあったね。

【他故】そういう意味では、みんなそれぞれお勧めできるしね。



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配信元: 文具のとびら

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