工夫とアイデアに溢れた台所を訪ねた&Premium145号(2026年1月号)「料理好きの台所」より、料理家・小堀紀代美さんの台所を紹介します。





レトロな佇まいを生かしながら、機能と遊びを添えて。
閑静な住宅街に立つ、築50年のモダンなつくりの一軒家。彫金作家がアトリエ兼住居にしていたという家を改修し、今年5月から夫と二人で暮らす料理家の小堀紀代美さん。
「家探しをしていたわけではないのですが、縁あってこの家と出合い、テラコッタタイルの床などレトロな雰囲気に惹かれて……。しかも、賃貸なのにリフォーム可能だったので、引っ越しを決意したんです」
契約から入居まで2か月半。急ピッチで改修のアイデアを練っていく上で大切にしたのは、「この家の魅力的な部分はきちんと残しつつ、心地よい住まいにすること」。なかでも、家の中心であり、小堀さんにとっては仕事場でもあるキッチンやダイニングへのこだわりはひとしおだ。
「もともとは台所と食事するスペースが壁で仕切られた、昔ながらの閉鎖的な間取り。その壁をなくし、レッスンで大人数分の料理もしやすいように奥行きのあるカウンターを造作し、ゆったりとしたコの字型のオープンキッチンにしました。調味料や道具類は、無駄な動きがないように準備や調理、盛り付けなど動線を考えて収納。また、以前からの黒タイルの壁や横長で広いシンクは、気に入っていたので生かすことに」
さらに、小堀さんは長年愛用してきた家具も、この家のキッチンになじむようにリメイク。増設したカウンターの下には、20年前から使っている北欧のヴィンテージチェストを設置し、両サイドにはラタン扉の収納を加えた。壁はお気に入りの床と揃えてテラコッタ色に塗り、その前には、料理にまつわる本を色別にグラデーションで並べた圧巻の本棚が。
「昔、洋書で見た本棚に憧れ、約30年前からうちのリビングにはずっと本棚がありました。この本棚は10年前に自宅で料理教室をすることになったときにオーダーしたもので、それ以来シンボルになっています。今回はそのままでは入らなかったために、サイズを調整し、色は壁より一段濃いめのテラコッタカラーに塗り替えました。本棚とキッチンカウンターが繋がって見えたり、本と一緒に食器が並んでいる様子がちょっと楽しげだなと思うんですよね」







小堀紀代美料理家
人気カフェ『LIKE LIKE KITCHEN』を経て料理教室を主宰。近著に『予約のとれない料理教室 ライクライクキッチンのスパイスルール』(マイナビ出版)。
photo : Isao Hashinoki (nomadica) text : Kazuyo Nojiri illustration : Shinji Abe
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COOKING LOVERS’ KITCHENS / 料理好きの台所。&Premium No. 145
かつて住まいの裏方であった台所は、いまや家づくりの軸となる、暮らしの中心にある存在になりつつあります。いい台所は、使い勝手のいい台所。使う人が自分自身の勝手にあわせて工夫をするのです。そして自分の勝手というのは、繰り返し料理をする中ではじめて見えてくるものですから、心地のよい台所の持ち主は、すなわち 料理好きであるといえるのではないでしょうか。今号の特集は「料理好きの台所」。手をかけ、使い込んだ台所からは、その人が楽しげに腕を振るう姿や、豊かな食卓や暮らしそのものが透けて見えるようです。すべてのものを取り出しやすくしている人、スッキリ何もない空間で料理に励む人、菜箸や布巾ひとつまでこだわって選ぶ人。工夫とアイデアに溢れ、すみずみにまで目の行き届いた、16組の料理好きのみなさんの台所を拝見します。
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