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〈地主の資産防衛戦略〉「収益は地主本人に」「土地は子へ」渡す仕組み…権利の異なる2つの受益権をもつ「受益権複層化信託」の活用術

〈地主の資産防衛戦略〉「収益は地主本人に」「土地は子へ」渡す仕組み…権利の異なる2つの受益権をもつ「受益権複層化信託」の活用術

【活用事例】事業用定期借地の土地を所有する地主の信託

ある地主の方の信託活用事例を紹介しましょう。地主のAさんは、都心近郊に土地を所有し、ドラッグストアやスーパーマーケットなどの流通事業の会社と事業用定期借地契約を結び、流通事業の会社に所有する土地を賃貸しています。

Aさんの年齢は70代前半で、いわゆる平均寿命まで15年くらいあります。土地は親から相続した土地です。

Aさんは、所有地に自身で賃貸物件を建築して賃貸するのではなく、一定期間限定して土地を賃貸する形式の「事業用定期借地」で賃貸することを好み、いまもその契約で賃貸しています。

事業用定期借地契約とは、契約期間が満了すると、賃借人は土地の上に建築した建物を解体し、更地にして土地を地主に返す契約です。地主が不動産賃貸事業のリスクを負うことなく契約地代を得ることができる点が、Aさんが気に入っている理由のようでした。

Aさんが賃貸する土地の契約期間はあと20年残っており、賃貸収入は安定していますが、次のような悩みがありました。

「自分が元気なうちは、これまで通り地代収入で生活していきたいのですが、エリア的に評価額が高く、遺産分割で子どもたちが揉めるのを避けたいです。さらに、子どもたちの相続税の負担のことも気になります」

「収益のある土地ですから、いっそ相続時精算課税制度を使って贈与するのがよいのではとも思いますが、贈与してしまえば地主の収入は減ってしまうため、これからの老後資金が足りなくなるのではと心配です」

相続のことまで考えると、このように悩む地主の方も多いのではと

筆者は考えています。

信託で「収益は地主に」「土地は子へ」渡す仕組みを作る 

そこで、信託ならではの仕組みである「受益権複層化信託」を考えてみましょう。

信託の仕組みを簡単に箇条書きにしてみます。

委託者:地主(Aさん)

受託者:子ども

信託財産:事業用定期借地契約の土地 

収益受益者:地主(Aさん)

元本受益者:子ども

信託期間:20年(事業用定期借地契約が終了する時期と同じ)

この信託により、Aさんは信託期間中、これまで通り地代収入を受け取り続けます。 一方、信託が終了したときには、土地は元本受益者である子どもが取得します。

Aさんの子どもは、いまは自身の固有財産として土地を得ることができないものの、信託が終了する20年後には、土地を自分のものとして取得する権利を持ちます。20年後に財産を承継する取り決めを、いまこの信託でできることがポイントです。

信託開始から終了まで、もう少し補足して説明します。

まず、土地の所有権についてです。この信託では、子どもが受託者を務めるため、信託開始時に土地の所有権は受託者の子どもに移転します。子どもは土地の所有者となるものの、あくまで受託者として土地の所有者となるのであって、通常、所有者ならば有する収益権を持ちません。土地の収益権は、収益受益者である地主(父親であるAさん)が有しています。

受託者である子どもは、賃借人より得た地代から固定資産税など信託財産を管理する費用を控除した地代を収益受益者の父親(Aさん)に給付します。そして、信託が終了したときに初めて子どもの固有の財産になり、子どもは土地の使用・収益権、管理・処分権を合わせて持つことになります。

このあたりにも信託の「分ける」機能が表れています。

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