受益権複層化信託のメリット
この信託を活用することで、地主と地主の子は次のようなメリットがあります。
1.地主は信託期間中安定した収益を得ることができる
2.子への土地の承継を今確定できる
3.相続時の評価や分割で揉めるリスクを軽減できる
4.借地契約の安定性を損なわない
5.地主と子の役割分担が明確になる
収益力のある土地を所有する富裕層にとって「だれが土地の所有者になるか」を確定しておくことは、相続時の遺産分割で揉めるリスクの軽減につながります。
「高度な設計」が必要な信託である点に注意
メリットのある受益権複層化信託ですが、専門性の高い信託でもあり、設計時には信託に精通する専門家の関与が不可欠です。
とくに税務上の取り扱いには要注意です。信託の仕組みにより、受益権の評価が大きく異なります。設計した受益権複層化信託が、受益者連続型信託に該当する信託か、受益者連続型信託ではない信託かによって、受益権の評価が異なります。
信託に関する権利を有する受益者は、信託を設定したときに相当の対価を負担せずに受益者となったときに課税されます。
地主の受益権複層化信託の例では、地主の子が、相当の対価を負担せずに元本受益者となっていますので、地主の子に元本受益権の評価額分の贈与税が課税されます。
また、同様に、信託が終了したときに残余の信託財産を得る帰属権利者が、相当の対価を負担せずに財産を得るとき、帰属権利者に課税されます。
地主の子は、信託開始時に元本受益権の評価額分に対して贈与税が課税されたので、信託終了時には課税されません。
受益権複層化信託における収益受益権の評価と元本受益権の評価は、下記のイメージ図のように評価されます。受益者連続型信託と受益者連続型信託ではない信託では、受益権の評価額が異なるため要注意です。これらを十分に検討せずに組成すると、思わぬ課税が生じることとなります。
信託に詳しい税理士と信託組成の経験が豊富な法律専門家とが協力して、受益権複層化信託を検討していけるとよいでしょう。
[図表]受益者連続型信託ではない信託と受益者連続型信託の比較
