◆バランスの良い「タリーズ」
タリーズはスタバ進出の翌年、97年に1号店を構えました。当初はスタバよりも目立たない二番通りなどに店舗を構え、成長ペースで出遅れました。しかし、2006年に伊藤園の傘下に入ってからは出店ペースを加速、現在では約800店舗を展開しています。伊藤園が生産するタリーズ飲料はコンビニでも見かける人気商品です。屋外ではスタバの好立地が目立ちますが、タリーズは近年、郊外や駅ナカでの出店を強化しています。コーヒーの価格はスタバと同じですが、味ではタリーズを評価する意見が多くみられます。カフェ利用ならタリーズ、甘いドリンク目当てならスタバといったところでしょうか。フラペチーノを意識したスワークルも提供しています。他社と比較するとフードメニューが充実しており、パスタやホットドッグ、ドーナツやサンドイッチを提供しています。食事目的で訪れる客も多いです。スタバほど一等地にこだわっていないため、ゆとりのある席も多く、居心地の良さも一定の評価を得ています。以前は駅中への出店を強化していましたが、近年では病院内出店を強化し、「穴場」を狙っています。
◆大手でも安泰ではない
90~2000年代に勢力を拡大した各社ですが、近年では伸びが鈍化しています。各社とも店舗数を拡大していますが、年間100店舗ペースのスタバが比較的ハイペースで、今年中に2000店舗を達成する見込みです。中四国および東北では店舗数が数店舗しかない県もあり、ドライブスルーを併設したロードサイド店で攻勢をかけています。しかし、スタバも2010年代以降、都市部の店舗では質の低下を嘆く意見も聞かれるようになりました。前述の座りにくい椅子の設置に加え、カフェ時間帯は非常に混雑しています。モバイルオーダーを導入していますが、一方でレジ利用の客による行列ができ、サードプレイスどころか行列を観に行く感覚です。価格の分の価値を提供できておらず、米中ではスタバ離れが進行しました。今のところ好調の国内も、今後は同じ道を歩むかもしれません。
国内の人口は減少し、市場は停滞しています。一極集中やインバウンドの増加で主要駅周辺の店舗は堅調ですが、郊外や地方は苦戦することになるでしょう。そのうえ、輸入コーヒー豆の価格が高騰して利益は圧迫。値上げして質を高めるか、安売りで勝負し続けるのかーー各社は厳しい選択を迫られるでしょう。
<TEXT/山口伸>
【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

