いつまでも輝く女性に ranune
背後にチラつく「実家の太さ」…世帯年収1,500万円でも消えない劣等感。〈42歳地方出身妻〉がSNSの「おせちの写真」に打ちのめされるワケ

背後にチラつく「実家の太さ」…世帯年収1,500万円でも消えない劣等感。〈42歳地方出身妻〉がSNSの「おせちの写真」に打ちのめされるワケ

東京都内で働く佐藤志音さん(42歳・仮名)は、年収700万円。3歳年上の夫は年収800万円で、夫婦2人なら余裕のある暮らしです。仕事は多忙ながらもやりがいがあり、日々は充実している——。それでも、年末が近づくと胸の奥がざわつく“恒例の悩み”がありました。

「お重も受け継ぐんだ…すごい」

共働きで世帯年収1,500万円。忙しくも満ち足りた日々を送る佐藤志音さん(42歳・仮名)には、年末になると胸がざわつく理由があります。

それは、SNSにずらりと並ぶ“受け継がれたおせち”の写真。

「義実家から受け継いだ味です」
「祖母の代から続くお重で」

そんな一言とともに投稿される、整った料理と美しい食卓。それを見るたび、志音さんは胸の奥がきゅっと痛むといいます。

志音さんは地方の出身。奨学金を受けながら国立大学へ進学し、努力で今のキャリアを切り開いてきました。


一方、大学の同級生は東京の中高一貫私立出身者が多く、実家は裕福。社会人になってから知り合う人も、家族からの支えがありつつ余裕ある生活を送る人ばかりでした。

「結局、“地盤”って一代でつくれるものじゃないんですよね。あの人たちは、何もしなくても受け継がれる伝統や文化がある。友人や知人のおせちを見ると、その差を突きつけられる気がして……とはいえみなさん控えめで真面目な方が多いので、そんなことは普段はまったく話題にも上らないんです」

でもお正月になるとSNSには「それぞれの家のお正月」の光景が並びます。

「義実家と実家から受け継いだ味が我が家の味。娘たちにも受け継いでほしい味です。お重も義実家が大事に使っていたものを譲り受けました」

そんな投稿とともに並ぶ、整った黒豆、つややかな栗きんとん、漆塗りの立派なお重。そしてテーブルには、センス良く並ぶ器やランナー。「お重も“受け継ぐ”ものなんだ、と驚きました」


「自分にはそういう伝統や地盤がないんだな、と……。もちろん実家でもおせちはありましたが、お皿に黒豆やら伊達巻きやらが盛り付けてあるだけ。あまりお正月感は感じないけれど、それが普通だと思っていました。義実家も神奈川なのですが、おせちはデパートか通販で購入したものです」

志音さんは、自分でもばかばかしいと思いながらも、どこか胸が痛む気持ちを隠せませんでした。

おせちに力を入れ始めた志音さん

もっとも、志音さんは仕事が忙しく、料理のレパートリーはあるものの、おせちを一から手作りする余裕はありません。

そのため、彼女が編み出したのは“志音家流ハイブリッドおせち”。

・黒豆は夫に担当してもらう
・筑前煮ときんぴらごぼう、田作りは実家の母に送ってもらう
・数の子や伊達巻きなどは購入品をそろえる
・お重は用意するけれど、盛り付けは今どきの「一人一皿スタイル」

お重は漆塗りだけれどもモダンなお重を神楽坂の雑貨店で購入。テーブルコーディネートもSNSを参考にしながら工夫するようになりました。

「頑張っても“受け継いだ味”には叶わないですけど……」

志音さんは照れたように笑います。

夫に黒豆作りを担当してもらうのは、「夫が異様に黒豆作りにこだわりを持っている」から。「年末の休みが始まった日から作り出すのですが、豆を煮ている時間が好きみたいです」

また、実家の母親にわざわざ筑前煮ときんぴらごぼう、田作りを送ってもらうのは「うちの母親、料理がうまいんです。私は勉強に夢中になるあまり、料理を教えてもらう機会がなかったのですが、母が料理が得意でお願いすると喜んで作ってくれる。やっぱり得意な人に得意なことを頼んだほうがいいと思うんですよね」とのことです。

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