◆手で持ち運べないほどの大荷物でも「送料もったいないやろ?」

「目を向けると、荷台に段ボール箱を3つ積み上げて歩いてくる方がいて、私の近くの席に座られたんです」
段ボールには地元の特産品で作られたジュースの名前が印刷されていた。土産物を買い込んだのだろうが、守金さんは疑問に思った。
「そんな大荷物、普通は送ると思うんですが……その男性は大きな声で電話を始めて、『重いわ。けど、送料もったいないやろ? 持って帰るわ。新幹線置くとこあるんかな?』と話していました」
守金さんは「これは新幹線のどこに置くつもりなのだろうか?」と首をかしげた。
新幹線が到着すると、偶然にも守金さんと段ボールを持った男性は、列を挟んで並びの席になった。その人物は窓側の席であった。
「無理やり荷台ごと突っ込もうとしていましたが、入らなかったんです。それで、荷台から段ボールをおろして席の足元に積み上げ始めました」
足の置き場はどうするのだろう……と思いながら見ていると、隣の席が空いていたため、その男性は隣の席の方向に足を伸ばし、折りたたんだ荷台も隣の席の前に置いていた。
◆乗客が困惑「すみません、この席なのですが…」
そして、次の駅で隣の席の客が乗ってきた。「申し訳なさそうに『すみません。この席なので、荷台をよけてもらえないですか?』と低姿勢で話しかけていました」
段ボールを持った男性は「あ、そうですか」と軽く謝り、段ボールと前の席の間のわずかな隙間に荷台を押し込んだ。しかし、足はまだ隣の席に侵入したままだった。
「隣の席の方は迷惑そうな表情をされていました。気の弱そうな感じの方だったので、『何も文句言ってこないな』と思ったのか、特に申し訳なさそうにする様子もなかったんです」
しばらくすると車掌が巡回してきて、その状況に気づいた。
「車掌さんが『隣の方のお席の足元に入られていてご迷惑ですので、足をご自分の席に置けるようにして頂けませんか?』と言われていました。
ところが、段ボールの男性は『は? 見たら分かるやろ?これのどこに足置けるっちゅーねん!』とキレ始めたんです」
隣の席の人は「ありがとうございます。もういいですよ」と焦った様子で言ったが、車掌は「そういうワケにはいきませんので」と毅然とした態度で、荷物の置き場所を指定した。
結局、段ボールと荷台はどこかに移動させられ、その男性はバツが悪そうな顔をして席に戻ってきたという。
公共交通機関では、自分の都合だけでなく、周囲への配慮が必要。スペースが限られている新幹線の車内では、大きな荷物の持ち込みは事前に考慮すべきことなのである。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

