富裕層の資産防衛…地政学リスクを見据えた「海外資産管理/海外移住」の実情【国際弁護士が解説】

富裕層の資産防衛…地政学リスクを見据えた「海外資産管理/海外移住」の実情【国際弁護士が解説】

「香港にある財産が、中国政府に没収されるリスク」を考察

とはいえ、「中国本土の支配が強まると、香港にある財産を没収されてしまうのでは?」とのコメントももらうことがあります。

もし今後、中国政府による香港支配が強まり、強権政治の程度が著しく高まったなら、香港にある財産を没収するなどの事態が起こるかもしれません。そして、政府が財産を没収しようとするとき、いちばん没収しやすいのは不動産でしょう。そのため、筆者が提案するストラクチャーは香港の銀行口座に資金を置くだけで、不動産所有までは勧めていません。

また「香港の銀行口座も封鎖されてしまうのでは?」と不安がる方もいますが、そもそも銀行口座の封鎖は、経済破綻した際に行われる施策です。実際、日本でも第二次世界大戦後の1946年に実施されました。むしろ、銀行口座の封鎖が行われるなら、香港より日本で行われる確率の方が高いかもしれません。

もし香港の銀行口座の封鎖を恐れるなら、香港の証券会社などを経由して香港外の株式などを購入しておく方法を取ってもよいでしょう。そうすれば、香港には「財産がない」わけですから、万一、中国政府=香港政府が没収しようにも困難です。

財産の置き場所としての「香港」「シンガポール」を比較

では、シンガポールと比較するとどうでしょうか? そもそもシンガポールには政府を批判する言論の自由はありませんから、その点では違いはありません。それでも「シンガポールは中国の支配下にないから安全度が高い、だから香港よりシンガポールに資産を置きたい」という方もいます。

しかし、シンガポールでは就労ビザを持って住んでいない限り、個人の銀行口座開設は極めて困難です。また、シンガポール法人の設立は容易ですが、シンガポール法人名義の銀行口座を開設することは極めて困難です。

ですから、口座開設の難易度・金融機関の使い勝手・地政学リスクなどを総合的に勘案した結果、資産を置く場所としては、香港がベストではないかというのが私の現時点での結論です。

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