行方不明相続人問題がもたらす「見えないコスト」の問題
ここまで見てきたように、所在不明相続人・行方不明相続人がいる相続不動産についても、法律上の手段はまったくないわけではありません。
しかし、実務の感覚としては、次のような「見えないコスト」が重くのしかかります。
●家庭裁判所での手続きに、数ヵ月〜1年以上かかるケースも
●不在者財産管理人や調停・訴訟に伴い、弁護士費用・司法書士費用などが発生
●その間にも、固定資産税や空き家の維持費が発生
●売却のタイミングを逃し、物件価格が下落するリスク
●相続人同士の感情的な鬱憤や疲弊の蓄積
「実家を売りたいだけなのに、ここまで大ごとになるとは思わなかった」という声は、相続現場では決して珍しくありません。
「行方不明相続人」を生まないために、生前からできる対策とは
ここまで読んで「そんな面倒なことになる前に、なにか手を打てなかったのか」と感じられた方も多いのではないでしょうか。実際、「実家を売りたいのに売れない」という事態の多くは、生前のちょっとした準備でリスクをかなり減らすことができます。
①遺言書で「誰にどの不動産を渡すか」を決めておく
遺言書を準備しておき、
●自宅は同居している子に相続させる
●代わりに預貯金や保険でバランスを取る
といった内容を明確にしておけば、「相続人全員の共有」にした結果、売りたいのに売れない…という状況を回避しやすくなります。
②家族信託で「将来の売却ルール」まで設計しておく
親が元気なうちに家族信託を組み、
●将来、介護費用や施設入居費用のために実家を売却できるようにしておく
●空き家になるリスクを見越して、処分方法やタイミングのルールを決めておく
といった設計をしておけば、認知症や判断能力の低下があっても、「売りたいのに売れない」という困った事態を事前に回避しやすくなります。
③疎遠な親族の存在を「見て見ぬふり」しない
相続人になり得る、
●前婚の子ども
●長年疎遠になっている兄弟姉妹
●海外に移住したまま音信不通の親族
といった人の存在を「面倒だから」と放置してしまうと、将来の相続場面で「所在不明相続人」として一気に問題が噴き出すことがあります。
可能な範囲で構いませんので、
●どのタイミングで誰が相続人になるのか
●いざというときに連絡が取れるのか
といった点だけでも、生前のうちに整理しておくことが望ましいと言えます。
