◆ねねをなぐさめた!? 信長の意外な一面
長浜城主となった秀吉だが、その後も伊勢・長島の一向一揆や甲斐の武田勝頼との戦い、越前一向一揆の平定などに駆り出され、戦地にいることのほうが多く、ゆっくり領国経営をすることができなかった。なので、留守は秀吉の重臣や一族などが守っていた。
とくに正室のねねが、秀吉を同伴せずに安土城の信長のもとに土産物を持って訪問していることが判明している。信長に会っているのだから、当然、その妻女にも進物を渡したと思われ、女同士の外交もおこなわれたことだろう。
ちなみに、信長のもとを訪れたさい、ねねは秀吉の女癖の悪さを信長に愚痴っている。城主になったことで秀吉は慢心し始めたのかもしれない。
これに対して信長は、「あなたは以前会ったときより美しくなった。そんなあなたに秀吉が不足を申しているは言語道断だ。
あなたのような女性はどこを探してもあの禿げ鼠(秀吉)はつかまえることはできやしない。だからあなたも妻として堂々とかまえ、やきもちなどは焼かないように」と諭している。
部下の妻をなぐさめる信長というのは、何だかイメージにそぐわない。
〈TEXT/河合 敦〉
【河合敦】
歴史研究家・歴史作家・多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。 1965年生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業、早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も。近著に『早わかり日本史』(日本実業出版社)、『逆転した日本史』、『逆転した江戸史』、『殿様は「明治」をどう生きたのか』(扶桑社)、『知ってる?偉人たちのこんな名言』シリーズ(ミネルヴァ書房)など多数。初の小説『窮鼠の一矢』(新泉社)を2017年に上梓

