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海外が憧れる日本の美。じつは「理想世界の表現」だった? 日本庭園の意外なルーツ

海外が憧れる日本の美。じつは「理想世界の表現」だった? 日本庭園の意外なルーツ

日本庭園を育んだ2つの源泉

白神山地
東アジア最大級のブナ原生林が広がる白神山地のブナ林(青森・秋田) Scirocco340/Shutterstock.com

現在につながる日本庭園のかたちが生まれた背景には、大きく2つの要素があります。1つは、古代中国・朝鮮半島から伝わった庭園芸術。稲作や文字など多くの渡来技術のなかに、造園技術がありました。同様に大陸からもたらされた哲学思想、仏教も庭園づくりに大きな影響を与えます。もう1つは、日本の風土気候と、森羅万象に生命や霊性が宿ると感じる世界観、古来の日本人がもつアニミズム*です。南北に長い国土、降雨量の多い温帯気候にあって、植生の多様性に恵まれた反面、台風や地震などの自然災害に常にさらされてきた日本人の自然観こそが、日本庭園を育む土台となります。

*アニミズム(animism)とは、人間に限らず、動物や植物、石、山、川などのあらゆる自然物や現象に霊魂(魂)が宿っていると考える思想や信仰のこと。

海洋風景と理想世界

文化の違いを超えて、庭園のはじまりは、理想世界、楽園、天国を表すことが多いのですが、じつは日本の庭園もそうでした。有機的な曲線を描くゆるやかな汀(みぎわ)をもった池は大海を、池の中島は、古代中国の伝説にある理想郷である蓬莱島を表します。それは、自然の海洋風景の再現のなかに、理想世界が象徴的に表された庭園空間だったのです。島国日本の心象風景は、何よりもまず、島々を囲む海にあったのでしょうか。

平等院鳳凰堂(京都)
春は桜が満開の平等院鳳凰堂(京都)。cowardlion/Shutterstock.com

この頃にはすでに、やはり日本庭園らしさの重要な要素である、自然石による石組(いわぐみ・いしぐみ)も見られます。早い段階から幾何学構成で造られた西洋の庭園とは異なり、日本では、自然風景を縮尺して再現しながら、たとえば、聳え立つ自然石は仏教における世界の中心である須弥山を表すなどの象徴が重ねられ、典型的な日本庭園の空間へと発展していきます。空間づくりの要となる自然の風景の再現へのこだわりは、日本的な自然観、自然への畏敬の念の現れといえるでしょう。

『源氏物語絵巻』(国文学研究資料館所蔵) 
『源氏物語絵巻』(国文学研究資料館所蔵) 

国風文化が完成される平安時代は、この海になぞらえた池を中心にした「池泉庭園(ちせんていえん)」の基礎的な構成が整ったとされます。寝殿造りの貴族邸宅を完成するのは、南側に設けられた池泉庭園であり、四季の移ろいを愛で、大きな池では船遊びや釣りを楽しんだ様子が、源氏物語などからもうかがえます。庭と建築を一体とした空間とする「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の思想も日本の庭園の重要な要素であり、建築と庭園の姿は常に密接につながりつつ、変遷していくことになります。

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