3つの様式
ところで、ひと言で日本庭園といっても、イメージする庭の姿は一様ではないかもしれません。睡蓮池に太鼓橋がかかった風景をイメージする方もあれば、古淡な枯山水の庭を思い浮かべる方もあるでしょう。日本庭園は大きく3つの異なる様式で捉えることができます。
ここまでに見てきたように、池を大海になぞらえ、自然風景を再現した「池泉庭園」は、日本の庭園のすがたの基礎であり、時代によってさまざまなかたちをとって発展していきます。

しかし、そればかりではありません。海外で日本庭園といえば、圧倒的にゼン・ガーデンなどと呼ばれる、いわゆる「枯山水」がイメージされることも多いのです。「枯山水」とは水を使わず、石や砂で山水(風景)を表現した庭(ドライ・ランドスケープ・ガーデン)です。室町時代に禅宗寺院の修行にふさわしい象徴的な空間として禅的思想と密接な関係を持って生まれ、その後はより幅広く、大名や公家の書院造り庭園などでもつくられるようになっていきます。

さらに日本庭園の発展に大きな影響を与えたのが「露地・茶庭」です。室町から桃山時代の茶の湯文化の発展にともなって現れた庭園の様式です。茶の湯の精神に従って構成される野趣を旨とした庭園は、茶の湯に臨む心身を整えるための場として構想されました。
千利休による侘び茶とともに完成した露地の理念が、今日の茶庭の原型をつくったとされます。仏教的には俗世と悟りの世界をつなぐ小径を意味する露地は、禅的な思想からくる侘び寂びの美学、簡素・枯淡の美を志向する、新たな庭園空間を拓くことになります。また、露地の出現とともに庭園に取り込まれた、灯籠、蹲(つくばい)、飛び石などの構成要素が、現在では日本庭園になくてはならないアイコン・イメージとなっているのも興味深いところです。

フランス庭園といえば、17世紀のフランス整形式庭園、イギリス庭園というとまずは18世紀のイギリス自然風景式庭園というように、主にある国のある時代の庭園様式を指したものになることが多いのですが、日本庭園では、これまで見てきたように歴史上で発展してきた異なる様式が重なる多面性が、さらに豊かな庭園の世界観を醸成しています。
次回はこれら3つの様式の庭園を、著名な庭園の例を交えて見ていきます。
【おすすめ参考図書】
「日本の庭園 – 造景の技術とこころ」五十八進士、中公新書、2005年
「すぐわかる日本庭園の見かた」尼崎博正、東京美術、2009年
Credit 文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤浩子 - フランス在住/庭園文化研究家 -
えんどう・ひろこ/東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。
