◆携帯のバイブ音はトラブルの予兆

「年末年始って、スーパーはものが飛ぶように売れるから、利益を上げやすいって思われがちですが、実際、一番キツい時期です。特売商品が多く、メーカーや配送業者が止まるため、どの商品も余裕を持たせて発注されます。つまり、限りある倉庫のキャパを、生鮮食品や日用品を含むすべての商品で奪い合う状態になるので、営業としては競争が厳しくなるんです」
そして現場における「読みのズレ」が彼への直撃弾となる。
「スーパーの担当者が発注を絞りすぎて欠品すると、最悪の場合、年末年始で休んでいる最中の僕らに連絡が来ます。でも、配送がストップしているから物理的に補充は不可能なんです。なにもできないことを丁寧に説明して、納得してもらうしかありません」
神村さんにとって、携帯のバイブ音は「トラブルの予兆」でしかない。とはいえ、メーカーの営業職として、電話に出ないのが一番信頼を損なうことが分かっている。彼の神経は、ポケットの中の携帯に集中しているそうだ。
神村さんの憂鬱はそれだけではない。このタイミングで想定より売れず、在庫に余剰が出てしまうと、当然ながら翌月の発注が減り、売り上げは下がってしまう。自身のノルマを毎月達成できるように慎重に提案しなければならず、年末年始の休み前は毎日胃が痛いと神村さんは語ります。
世間が休みモードになる年末年始の裏側で「休みであっても心が休まらない」という人たちも少なくないのだ。
<取材・文/後藤華子>
―[年末年始の憂鬱]―
【後藤華子】
サブカルと外食が生きがいのアラサー人妻ライター。ライブハウスと居酒屋は実家みたいなものです。短所は好きなものの話になると、早口になるところ。

