
地域コミュニティが希薄化し、親子が社会から孤立しやすい現代。学校という居場所を失った子どもたちにとって、スマホやゲームは唯一社会と繋がれる「命綱」です。しかし、その依存が親子の断絶を招き、ときに「家庭内暴力」という悲劇的な形でのSOSに変わることもあります。デジタル犯罪などのリスクから子どもを守りつつ、どうやって家庭を「安全基地」に再構築し、未来への希望を育むのか。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校児の行動に対する親としての対応を解説します。
ゲームがすべてになる前に、親子で話してルールをつくる
不登校の子は家で長期間過ごすので、ほとんどの子がスマホやゲーム漬けになっています。ゲーム依存におちいる子も少なくありません。
ネットのつながりが命綱になっている子が多い
友だちや学校などリアルな世界と断絶している子どもにとって、ネットの世界は命綱のような存在です。一日中パソコンやスマホに向かっている子にイライラするのは仕方ありませんが、無理にスマホをとり上げたりインターネットを遮断したりすることは、子どもの怒りをいたずらに刺激するだけで、それが不登校の克服に役立つことはありません。
とはいえネットには危険があふれています。さまざまな詐欺や性的犯罪、薬物などSNSを通じた誘惑も多く、孤独感を覚えている子に「わかってくれる人がいた」と思わせて引き込もうとします。また、昼夜逆転した状態でゲーム依存におちいるリスクもあります。
〈親子でネットをめぐるルールを話し合おう〉
1.ネットを使ったり、ゲームをしたりする時間は1日__時間まで。終了は遅くても_:_まで。
2.課金 月上限____円。都度、スクショして申請する(親が支払う場合のみ可)。
3.フレンドへの公開 実名・住所・学校名・制服写真はNG(顔出し配信禁止)。
破られることを前提として定期的にルールを見直す
「ゲームがすべて」になる前に、歯止めとなる家庭内ルールをつくっておきましょう。ルールは「命令」ではなく、親子のとり決めです。
親は子どもにとってゲームが救いであることを理解し、やめさせるのではなく「どうつき合うか」を子どもと話し合いましょう。子どもには「心身の健康を守るためにルール設定が必要なこと」を説明し、両者が納得したうえでルールを定めます。ルールは可能な限り両親が一緒に子どもと話し合いましょう。
ルールができたからといって、子どもはルール通りには行動しません。ルールは「破られること」を前提とし、定期的に見直します。父親が不在のときは緊張がゆるみ、ルールを破りがちになります。それでも、警察官のように子どもを監視し罰したりせずに、たとえば「〇時までの約束だよ。もうやめよう」と穏やかに、かつ具体的に伝えます。子どもが言うことを聞かないときも「やれやれ」といった程度で感情的にならないようにします。
もし指示を受け入れてくれたら、それを認めて、たとえば「自分でやめたね」と声掛けをしましょう。
〈SNS・ゲームについての親からのお願い〉
1.SNS 投稿 位置情報OFF。制服・通学路・家の外観が写る写真はNG。
2.トラブルの共有 いじめ・勧誘・性的要求・金銭要求は即スクショし、親に知らせて。
3.夜の利用 就寝90 分前からは端末の電源をオフにして、ベッドには持ち込まないでね。音楽は固定スピーカーで聴いて。など
子どもに暴力を振るわれたら…キーパーソンは父親
不登校が長期化すると、家庭内暴力に発展することがあります。暴力は「思うようにならない」ことによるイライラの暴発であり、幼児返りの延長でもあります。たいていの場合、それは母親に向けられます。
暴力や暴言は毅然として否定する
暴力に対する対応は、距離をとることが基本です。驚いたりひるんだりせず、さっとその場を離れましょう。その場で説教したり、暴力や暴言で止めようとしたりするのは避けます。また、暴力で要求が通ったという経験をさせないことが大事です。
子どもの暴言や暴力は、不満やいらだち、焦燥感など苦しい気持ちのあらわれです。親が登校を迫ったり、将来の話題をもち出したりすると、衝動的に反発して暴力に及ぶことがあります。こうしたつらい気持ちを受け止めることは大切ですが、それは暴力を受け入れることではありません。どんな暴力も認めず、毅然とした態度で拒否してください。子どもが落ち着いたら「暴力を振るわれては、一緒に考えられない」ことをはっきり伝えましょう。「行動は止める。でも、気持ちは聞くよ」という姿勢を伝えます。
父親、もしくは第三者の介入が効果的
暴力だけでなく大声で騒ぐ、物を壊すなどの衝動行為も見逃してはなりません。父親が制止したほうがいいでしょう。父親がいないときに起きやすいので、暴力が始まったら可能な限り距離を空けましょう。
暴力がくり返し発生する場合には、警察の関与も必要です。母親はホテルや実家、シェルターなどへ避難し、父親は家に留まり様子を見ます。その後、子どもが落ち着いたら、父親は子どもと話し合い、安全に配慮しながら段階的に母親を帰宅させます。
父親は子どもにとっては力の象徴です。子どもが暴力に訴えたからといって自分も暴力で子どもを罰しようとしてはいけません。あくまで限界を越えそうになったら押し戻す程度に加減しましょう。母親が弱腰である一方、父親が一切聞く耳をもたずに登校を強制する家庭では、コミュニケーションが成り立たず暴力に発展しやすいので注意してください。
〈「死にたい」という言葉をもらしたときは〉
子どもが「死にたい」ともらすのは、SOS のサインです。自己否定感が強くなり、未来に希望がもてず「生きていけない」と感じるのです。このようなときは否定や批判をせず、子どもの話に耳を傾け「あなたが大事」という思いを静かに伝えます。くり返される場合は、カウンセリングや精神科の受診も検討してください。
