◆信じたくない現実を目の当たりに
「泣きました。本当に悲しかった。まるで大切に育ててきた子を奪われた気分でした」と美幸さんは当時を語っていたそうです。その落ち込みようは、夫の宮内さんも胸が痛むほどだったそうです。そんな中、決定的な光景を宮内さんは目の当たりにしたと言います。それは、ごみ置き場に捨てられていた空の除草剤の容器でした。当時、そのゴミ集積場は宮内さんとその中年夫婦だけしか利用していなかったようです。
「確証はありません。でも、誰がこんなことをするでしょうか。美幸が毎日大事にしているのを知っていて、わざとやったとしか思えません」宮内さんは静かにそう話しました。
理由はわかりません。花壇の華やかさに嫉妬したのか、虫を嫌ったのか。ただ一つ確かなのは、悪意がなければあの結果は生まれない、ということでした。
◆苦渋の決断で引っ越しを決意
モヤモヤしながらも、ショックによる精神的な疲労が重なり、美幸さんはその後体調が思わしくありませんでした。それから半年が過ぎ、宮内さん夫妻は転居を決断したといいます。
「せっかく手に入れたマイホームなのですが、もうこれ以上この地で生活することはできないと判断しました。あのショックが日々益々増殖され、1日でも早くここを出たくなりました」

「悲しいけれど、これでよかったんです。新しい場所で、また花を育てるつもりです。でも、ご近所付き合いって本当に重要ですね。ただ、これだけは住んでみないと分からないものなので、どうしようもないのですが……」と美幸さんは最後に笑顔を見せてくれました。
彼女にとって、草花はただの装飾ではなく、心を映す存在だったのです。枯れてしまった花壇は二度と戻りませんが、穏やかな時間が感じられる引っ越し先では綺麗な花が咲くといいですね。
<TEXT/八木正規>
※警察庁広報資料「令和5年における相談取扱状況について」
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

